【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


 そうやって笑う百合原さんのことが、私はあの日から妙に気になってしまうようになった。
 なんでなのかは分からないけど、心がザワザワする。

「本気の……恋」

 本気の恋がなんなのか、私には分からない。

 でも……確かに百合原さんが私の心を動かしているということは分かった。
 確かに百合原さんはカッコイイし、背も高くてスラッとしていて、素敵な人だとは思う。

 でも本気の恋なんて、私に出来るのだろうか……。
 そんな自信はどこにもなくて、今まで恋愛とは無縁で生きてきた私だからこそ、その自信が見つからない。

【奏音、おはよう。今日はちょっと寒くなりそうだから、暖かい格好しろよ】

 朝からこうしてメッセージを送ってくる百合原さん。私はいつもそれに対して【おはようございます。ありがとうございます】と返信をする。
 だけどもうちょっと、なんか……返信した方がいいのか、とか悩んでもしまう。
 こんなことを悩むことなんて、ないと思っていたけど……実際に私は悩んでいる。

 そして私は最近、とんでもない事実を知ってしまった。 それは百合原さんが【御曹司】だということだ。
 百合原さんのお父さんが、あの有名な洋菓子店の社長さんだった。
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