【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


 奏音もすでに到着していたようだったが、なんだか奏音の様子がおかしい気がした。

「奏音、どうした?」

「え……?」

「なんかあったのか?」   

 奏音は「いえ、別に……」と、答える。

「あ、そうそう。奏音に食べてほしいものがあって持ってきたんだ」

「食べてほしいもの……?」

「そう、これなんだけど」

 俺はケーキの箱を取り出し、奏音に見せる。

「ケーキ……ですか?」

「そう。新作ケーキなんだけど、奏音に試食してほしいんだよね」

 奏音はそれを聞くと、「えっ!私で……いいんですか?」と驚いたような表情を見せる。

「ああ。俺はあまり甘いもの好きじゃないから、奏音に変わりに食べてほしい」

「そ、それは恐れ多いですね……」

 と言ってはいたが、「父親からの頼みだから、頼むよ」とお願いすると「わ、分かりました……。お役に立てるかどうかは、分かりませんが」と引き受けてくれた。

「じゃあ早速、食べてみる?」

「あ……はい」

 テーブルに向かい合って座ると、箱からケーキを取り出す。

「えっ!すごく、美味しそう……」

「食べて、奏音」

「い、いただき……ます」

 ケーキにフォークを入れ、一口食べる奏音。
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