【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。
「っ……!」
「どう?」
「やばいです。……めっちゃ美味しいです」
奏音はよほど美味しかったのか、目を見開いていた。
「本当に?それはよかった。父も喜ぶよ」
「今まで食べたケーキの中で、一番美味しいです」
そんなに喜んでくれるとは、思わなかった。 俺が想像してたよりずっといい顔をしている。
そして素敵な表情をしている。
「そんなに喜んでくれるなんて、嬉しいね」
「百合原さんも、食べてみてください。とても美味しいから」
奏音にそう言われたが、俺は「俺はいいよ。いつでも食えるし」と断ってしまった。
「……そうですか?」
「奏音のためにもらってきたから、奏音が食べな」
「……ありがとう、ございます」
所で、奏音の話とは何なのだろうか。
「奏音、話したいことってなんだ?」
「あ、いえ……」
「気になるから言ってくれ、なんだ?」
奏音はフォークを置くと、俺に視線を向ける。
そしてひと呼吸置いてから、「あの……私、百合原さんとはやっぱり、釣り合わないと思うんです」と俺に言った。
「ん……?」
「育ってきた環境も、生き方も、まるで私たちは違うじゃないですか。 私は一般人で、百合原さんは、その……」