【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。

 
 口を閉ざした奏音の言いたいことを、俺はなんとなく察した。
 多分、不釣り合いなことを言いたいのだろうと思う。
 確かに俺は親父の店をいずれは継ぐし、経営にも今後は関わっていかなければならない立場ではある。 御曹司と言えば、そうだとは思う。

「お、御曹司様と私がこうして一緒にいることは……本当はあり得ない訳であって……」

「つまり、奏音は何が言いたい?」

「わ、私は……百合原さんと、このまま一緒にいるのは……ちょっと不安になる、というか……」

 俺という存在が、奏音を不安にさせているだろうか……。 俺は別に、自分が金持ちのボンボンだとは思っていないし、特別扱いされているとも思ってはいなかった。
 いずれ店を継ぐと言っても、親父が引退してからになるだろうし、深くはそんなに考えてはいなかった。

「……私、やっぱり、あなたと」

「俺は奏音とずっと、一緒にいたいけど」

 俺は思わず、奏音の言葉を遮ってしまった。

「……え?」

「俺は奏音と、最高の恋がしたいけど」

 最高の恋がしたい、奏音と。俺はもう、奏音のことが好きになっているから。
 好きで好きで、仕方なくなっている。多分、愛おしいと言えばそうなんだと思う。
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