【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


 私の手をそっと握る百合原さんは、「奏音がたくさん初めてを知っていくことが、俺は嬉しいよ。 正直に言うと……本当に情けないんだけどさ。 奏音の頭の中、俺で全部いっぱいになってくれたらいいのにとか、情けないことばかりを考えてたんだ」と話してくれた。

「……百合原さんが、そんなことを?」

 そんなことを考えてくれているなんて、私知らなかった。

「ああ。情けないだろ? でもどうしても、奏音のこと奪いたかったんだよ。そうまでしても、奪いたかった」
  
 これがどういう感情なのか、未だに分からない。でも……。

「……私の初恋、奪ってくれるん、ですよね?」

 私がその言葉に動かされていることは、事実だった。 

「俺、奏音の初恋、もしかして奪えてたりする?」

「……そうかも、しれません」
 
 私はとっくに、初恋を奪われてしまっているのかもしれない。
 だって……不思議と、百合原さんといてもイヤなことがない。

「そっか。ちょっとずつ奪えてるんだ、初恋」

「……少なくとも前よりは、ですけど」

「奏音は素直じゃないね。 本当はさ、俺のことでもう頭の中、いっぱいになってるんだろ?」

「……違います」 

 なんでそんなに、彼は自信満々なんだろうか。
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