【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。
そ、それは……! 言ったかもしれないけど!
「い、言ってませんっ」
「言ってただろ。俺はちゃんと聞いたぞ」
「……言いました」
その男は私に「じゃあ家に案内してくれ」と歩きだしていく。
「な……なんなの」
スマホ貸したのに、今度は充電器まで……。
「何してる。早くしろ」
「わ、分かりましたっ」
その足で家の中へ案内すると、すぐにスマホを充電器を差し込む彼に、私は「なにか飲みますか?」と問いかけてみる。
「お構い無く」
「いえ、充電はそんなすぐにはたまらないと思いますので。 お茶くらい出します」
「そうか。悪いな」
「いえ」
コップを二つ取り出し、冷蔵庫から出したお茶を注ぎ入れる。
「どうぞ」
「ありがとう。いただくよ」
彼は一気にお茶を飲み干していく。
「おかわり、いりますか?」
「じゃあ、もらおうかな」
「ちょっと待っててください」
二杯目のお茶を注ぎ入れ、彼に「どうぞ」と渡す。
「ありがとう」
「所で……名前、聞いてませんでしたね。 私は笹田(ささだ)奏音(かのん)です」
「奏音か、いい名前だな。 俺は百合原(ゆりはら)久遠(くおん)」
「百合原、久遠さん」