【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


 奏音と正式に両思いになったあの日から、俺は奏音との時間を大切にしたかった。
 奏音との時間は、俺にとっては幸せなことでしかなかったから。

「久遠、最近なにかいいことでもあったのか?」

 そんな俺の様子を見たのか、父親は俺にそう聞いてきた。

「……別に」

 と素っ気ない態度を取ってみたが、父親はその俺の様子を察したのか「なるほど。その様子だと、その気になるって人と上手く行ったんだな」と嬉しそうにしていた。

「はっ!? 親父には関係ないだろ!」

「ほお……。顔が赤くなってるぞ、久遠」

「う、うるせえな!」

 親父のヤツ……余計なことを言おうとしているな。

「久遠は……その人のこと、愛してるんだな」

「……まあ、俺にとっては、大切な人だから」

 そう、奏音は俺にとって大切な人。クリスマスの日、俺は奏音にプロポーズすると決めている。

「そうか。……幸せにしてやれよ、久遠」 

「……言われなくても、分かってる」

 親父はホイップクリームを泡立てながら「そうか。久遠にもついに結婚相手が見つかったのか」と嬉しそうに微笑んでいる。

「いやいや、結婚はまだ早いだろ」

「そうか?」 

「……まあ、考えない訳じゃないけど」
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