【コンテスト作品】初めての恋の相手はファーストキスを奪った御曹司でした。


 百合原さんは私に「奏音みたいに真っ直ぐに生きてる人、初めてって意味だよ」と言ってくる。

「奏音は、人を好きになったこともない?」

「……ありません」

 人を好きになることは、恋愛において一番邪魔になることだから。

「本当にない?」

「……本当、です」

 ウソだ。 本当は、一度だけ人を好きになったことがある。
 でも私が好きになった人は、私のことを見てもくれなかった。 だから私は、人を好きになることさえやめた。

「……なあ、奏音」

 百合原さんは私の頬に優しく手を当てる。

「え……。なんですか?」

「奏音は、これからも恋愛はしないつもりな訳?」

「えっ?」

 百合原さんは「奏音が本当に恋愛が必要ないものだと思ってるなんて、俺には思えないな」と言って私を見る。
 
「俺には分かるよ、奏音。 奏音は、きっと心の中では恋愛がしたいと思ってるはずだ」

「はあ? なに言ってるんですか?」

 そんなこと、私は思ってない。……思ってなんて、ない。

「奏音、俺と本気の恋愛、してみない?」

「……はい?」

 私が百合原さんと、本気の恋愛を……?

 いや、ありえない。 そんなこと絶対にありえない。
 私は恋愛したい訳じゃない。
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