偽物の天才魔女は優しくて意地悪な本物の天才魔法使いに翻弄される

クラスメイトたちの本音



手を挙げたのは、先程泥棒を指摘した女子生徒だった。彼女の発言を聞いた瞬間、教室中がざわついた。

「先生、ポットさんだと思います」

オリビアは、驚いて顔を上げた。クラス中が自分を疑うような目を向けている。

「ポットさん?彼女は、いつも成績が良いじゃないですか。ヤーノルドさんの足を引っ張る必要なんて無いはずです。なぜ、ポットさんを疑うのですか?」

先生が尋ねる。

「だって、彼女が一番ハヤトくんをライバル視しているからです。ハヤトくんが活躍すると、いつも敵対するような目で彼を見ています。有名ですよ。ハヤトくんのこと、きっと妬んで逆恨みしてるんでしょう」

オリビアは慌てて声を張り上げた。

「違います!!先生、そんな事…私はやっていません!!」

必死で首を振るが、1人の女子生徒の言葉を皮切りに、皆がぽつぽつと賛同し始めた。

「そういえば……オリビア、何かとハヤトに突っかかっていたな」

「私も見た事あるかも……ハヤトくんにだけ態度が違った気がする……」

「っ………」

オリビアの背中に冷や汗が流れる。

やがて、遠慮がちだった声は大きくなり、オリビアへの非難の声へと変わっていった。皆、すでにオリビアが犯人だと決めつけている。

「俺もそう思う。どう考えてもオリビアしかいないよ。ドッジボールの時のハヤトへの対抗心、凄かったもん」

「オリビア、ハヤト君が来てから1位の座を奪われて悔しいのは分かるけど盗みは良くないよ」

「っ!!ちが……!!」

オリビアは泣きそうになった。クラスメイトの言っていることは、合っていた。確かに、自分はハヤトを憎んでいる。ハヤトに成績を抜かされてからは、ずっと我を忘れて彼に敵対心を剥き出しにしていた。

でも、そんなことはしない。卑怯な真似は彼女が最も嫌うことだった。

「オリビア、あたしは信じてるよ…」

サラはオリビアにそう声をかけたが、その表情はどこか暗い。

「サラ、本当よ……」

オリビアはつぶやき、ハヤトの方を見た。

──信じて。私はやってない。だって、私は昨日、ハヤトに…

オリビアの手の中で黄色い羽根ペンが輝いている。ハヤトに分かって欲しくて目を合わせようとするが、彼はオリビアを最初に疑った女子生徒と話しているようだ。

──そういえば昨日、悔しさのあまり、ライバル本人であるハヤトの前で泣いてしまった。しかも、自分は「過程より結果で勝負したい」と言ったではないか。もしかしたら、犯人と思われても仕方ないかもしれない。

そう考えると、言葉が出てこなかった。オリビアが黙り込むと、クラスメイトたちの口撃は加速した。

「いい加減、諦めたら?どう見てもハヤトの方が上だって」

「オリビア、見苦しいよ」

(皆……そう思ってたのね)

オリビアは涙を滲ませながら、立ち尽くした。

──これは私への罰だわ。

自分の力では到底及ばないくせに、勝手に彼を敵視し、妬んだ、私への罰。

誰もがその才能を認めるハヤトに、1人だけ冷たく振舞ったバチが当たったのね。

だってほら、誰も私を信じない。

オリビアは反論を諦めて、手の中の羽根ペンに目を落とした。

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