偽物の天才魔女は優しくて意地悪な本物の天才魔法使いに翻弄される
ライバルと付き合うという事
「待って」
「何!」
オリビアはイライラと聞き返したが、ハヤトは真剣な顔でこちらを見ていた。そのまま数秒見つめ合う。
オリビアが困惑して目を泳がせ始めると、ハヤトがオリビアを引き寄せるようにして抱き締めてきた。突然の出来事にオリビアは固まってしまう。
「!?ちょ、ちょっと!離して!!何やってるの?こんな…」
「オリビア、好きだ」
突然の告白に、オリビアは言葉を失った。
「…………………えっ?」
「好きだ…………………」
ぎゅうっと強く抱きしめられ、息ができない。心臓が激しく動いている。ハヤトは更に腕の力を強めた。
「ちょっと……くるし………一旦待っ…」
オリビアが苦しそうに呟くと、ようやくハヤトは力を緩めた。オリビアはハヤトから一旦距離を取ろうとするが、ハヤトは完全には離してくれなかった。オリビアの肩に手を置きじっと見つめてくる。
「……彼女さん、は?」
オリビアは疑問に思った。昨日図書館で揉めてたあれはなんだったのだ。
「別れたよ。元々好きじゃなかったけど、色々あってね」
「そ、そうなんだ……」
「ねぇ、オリビア……君は……?」
ハヤトの熱い視線から目を外し、オリビアは、考えた。本音を言うと嬉しかった。まだハヤトの事は謎だらけだし、からかわれると、腹が立つけど…ハヤトはいつも優しかった。自分の事を、応援してくれている。だから、言おうとした。
───”私も、好き”
だけど、迷いもあった。才能があって、周りの注目も集める憎きハヤトに、ここまで思い通りにさせるのも、なんだか自分のプライドが許さない。しかもこの人と付き合ったら、自分はずっと彼を羨み、自分と比べ続ける事になる。きっと劣等感でいっぱいの日々が待ち受けていることだろう。それに、私は耐えられる?だめだ。すぐに答えが出せない。
オリビアは言い淀んでいた。考えすぎて、気が付かなかった。ハッと顔を上げると、すぐ目の前まで顔が迫っていた。ハヤトが、自分の口元を見ている。