伊月くんと僕は、どうかしている(野いちご版)
「さて、なに買おうか」
渋った割には伊月くんはちゃんと待ち合わせのデパートに来てくれた。
今日も頭はセットされてなくて、服装も大人しい。いつものヤンキーファッションじゃデパートって行き辛いから、ちょうどよかったかもしれない。
「新生活で使うキッチンアイテムとかいいらしいけど、包丁はダメらしいよ。縁を切るって連想させるから。でも、伊月くん的にはむしろ送りたい?」
とりあえず一通り見て回ろうとフロアを歩きながらしゃべってたら、伊月くんに睨まれてしまった。
「逆に、運命を切り開くみたいな意味でアリっていう話もあるらしいけど」
ペアグラスとかも定番らしいけど、お腹の赤ちゃん入れてもう三人家族だって考えるとちょっと違う気もする。
「うわ、高っ」
中学生男子二人の小遣い予算という問題もあった。デパートよりも、もっとリーズナブルなところへ行くべきだったかもしれない。
「僕らのお小遣い何ヶ月分だろうね」
伊月くんに話を振ってもボンヤリとしていて返事がない。
黙ってついてきてくれてるだけ、まあいいか。僕が決めて、お金だけ巻き上げよう。
「伊月くんは結婚式呼ばれてるの?」
安定期に入って結婚と妊娠の報告を済ませて、これから式をあげるらしい。
「……呼ばれてる」
「そっか」
実は、お母さんから楓さんのおめでたい話を聞いたときに、その話も聞いていた。でも、伊月くんの口からも聞きたかった。
「サムシングブルーって言ってさ、結婚式のときに花嫁さんが青い物を身に着けると一生幸せになれるっていうジンクスがあるんだよ。知ってた?」
「知らん」
素っ気なく返事をさせるけど、返事をしてくれるだけマシだった。
「その青色ってのがさ、見えないところに身につけないとダメでさ……アレとか、ちょうどいいんじゃない?」
俯きがちに歩いていた伊月くんが顔を上げて僕の指差す方向を見た。そして、見る見る顔が真っ赤になっていく。
「おまえ、何考えてんだよ!」
僕が指さした方向には、光るトルソーら青いランジェリーを飾っていた。
「ブラはさすがにサイズ難しいけど、パンツぐらいならなんとかなるでしょ」
下着売り場に向かっていく僕を伊月くんが羽交い絞めにしてくる。
「楓姐さんにセクハラすんじゃねえ!!」
僕は姉妹がいるから、あんまり女性ものの下着に抵抗がないけど、一人っ子の伊月くんには効果抜群だったみたいだった。
「じゃあ、伊月くんはなにがいいと思う?」
立ち止まると、伊月くんは僕を解放してくれた。
振り返って聞くと、伊月くんは長ーいため息をついた後に目をすがめて笑った。
「サムシングブルーだっけ? それはいいんじゃねえの。好いた女の幸せを願うのが、男の中の男ってもんだからな!」
いつもの調子が戻ってきた伊月くんに、僕も笑顔になる。そうこなくっちゃ。
渋った割には伊月くんはちゃんと待ち合わせのデパートに来てくれた。
今日も頭はセットされてなくて、服装も大人しい。いつものヤンキーファッションじゃデパートって行き辛いから、ちょうどよかったかもしれない。
「新生活で使うキッチンアイテムとかいいらしいけど、包丁はダメらしいよ。縁を切るって連想させるから。でも、伊月くん的にはむしろ送りたい?」
とりあえず一通り見て回ろうとフロアを歩きながらしゃべってたら、伊月くんに睨まれてしまった。
「逆に、運命を切り開くみたいな意味でアリっていう話もあるらしいけど」
ペアグラスとかも定番らしいけど、お腹の赤ちゃん入れてもう三人家族だって考えるとちょっと違う気もする。
「うわ、高っ」
中学生男子二人の小遣い予算という問題もあった。デパートよりも、もっとリーズナブルなところへ行くべきだったかもしれない。
「僕らのお小遣い何ヶ月分だろうね」
伊月くんに話を振ってもボンヤリとしていて返事がない。
黙ってついてきてくれてるだけ、まあいいか。僕が決めて、お金だけ巻き上げよう。
「伊月くんは結婚式呼ばれてるの?」
安定期に入って結婚と妊娠の報告を済ませて、これから式をあげるらしい。
「……呼ばれてる」
「そっか」
実は、お母さんから楓さんのおめでたい話を聞いたときに、その話も聞いていた。でも、伊月くんの口からも聞きたかった。
「サムシングブルーって言ってさ、結婚式のときに花嫁さんが青い物を身に着けると一生幸せになれるっていうジンクスがあるんだよ。知ってた?」
「知らん」
素っ気なく返事をさせるけど、返事をしてくれるだけマシだった。
「その青色ってのがさ、見えないところに身につけないとダメでさ……アレとか、ちょうどいいんじゃない?」
俯きがちに歩いていた伊月くんが顔を上げて僕の指差す方向を見た。そして、見る見る顔が真っ赤になっていく。
「おまえ、何考えてんだよ!」
僕が指さした方向には、光るトルソーら青いランジェリーを飾っていた。
「ブラはさすがにサイズ難しいけど、パンツぐらいならなんとかなるでしょ」
下着売り場に向かっていく僕を伊月くんが羽交い絞めにしてくる。
「楓姐さんにセクハラすんじゃねえ!!」
僕は姉妹がいるから、あんまり女性ものの下着に抵抗がないけど、一人っ子の伊月くんには効果抜群だったみたいだった。
「じゃあ、伊月くんはなにがいいと思う?」
立ち止まると、伊月くんは僕を解放してくれた。
振り返って聞くと、伊月くんは長ーいため息をついた後に目をすがめて笑った。
「サムシングブルーだっけ? それはいいんじゃねえの。好いた女の幸せを願うのが、男の中の男ってもんだからな!」
いつもの調子が戻ってきた伊月くんに、僕も笑顔になる。そうこなくっちゃ。