新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
 もし私が王子――は結婚してしまったから、貴族に見初められたら、そんな幸せなことはないだろうに。
うっとりと考える。

 思い浮かべる貴族はもちろん若い美男子だ。金髪で背が高くてすらっとしていて。
 身分なんか関係ない、なんて抱き寄せられたりして。

 ただでさえ部屋が暑いのに、リエーヌの顔はさらに熱くなった。

 * * *

 洗濯ものは毎日王宮から馬車で洗濯室に届く。
 洗濯室は水車に併設されていて、王宮からは距離がある。

 そこには洗濯をする部屋と乾燥室、アイロン室がある。
 メインの洗濯室は水はけをよくするために床がわずかに傾斜している。
 初めはそれに慣れなくて、めまいのようにぐらついて転びそうになることが何度もあった。

 洗濯ははじめに手洗いとそれ以外にわける。
 シルクとリネンは手洗い。綿は基本的には洗濯用の樽の中へ。

 洗濯用の樽は人の腰ほどの高さがある。洗濯物を放り込んだらお湯と石鹸を入れて洗濯棒で攪拌(かくはん)する。洗濯棒は取っ手がついており、その先端は6本に枝分かれしている。その取っ手を回して洗うのだから、けっこうな力が必要だった。

 洗ったらローラーで水を絞る。これも重労働だ。
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