新人洗濯係がのぞいた秘め事~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~
* * *
人手が足りないから、手伝ってほしい。
そう言われて、リエーヌは数人の同僚と洗濯物を届けるお手伝いに王宮に行った。洗濯物自体は馬車で先行している。王宮内の各部屋に届けるお手伝いだ。
「王宮なんて久しぶり!」
「私は初めてです」
リエーヌは興奮気味に言う。
「王太子様、見れるかなあ」
「それより、独身貴族よ!」
「そんなの現実的じゃないわ。王宮勤めの独身男性にしたほうがいいわよ」
わいわいと言い合いながら歩くのは楽しかった。
30分ほど歩いていき、ようやく王宮に到着した。
それぞれ、待ち構えていた王宮の召使とともにペアになって洗濯物を持っていくことになった。
召使たちは洗濯係の女性たちよりいい服を着た女性だった。プライドが高そうでツンとしていた。彼女らも庶民とはいえ、リエーヌたちより裕福な家庭の出身の女性たちだ。
リエーヌはペアになった女性にたくさんの洗濯物を積み上げられ、前が見えなくなった。なのに召使は数枚を持っただけだった。
リエーヌは文句を言えず、黙ってあとをついて歩く。
前が見えないので、ついていくだけでも必死だった。
だから、置いて行かれたことに気が付かなかった。
だから、曲がり角で周囲を確認する余裕なんて、さらさらなかった。