番外編SS詰め合わせ
◆新妻ですが、離婚を所望いたします 〜御曹司との甘くて淫らな新婚生活〜
「皐月くん?」
「……ん?」
ハ、としたように、彼がこちらを向く。近頃仕事が忙しそうな彼は、帰宅して遅めの晩ごはんを済ませてしまえばもうすっかり眠そうだ。今だって、つけているテレビを観るでもなくソファでうとうとしていた。
早くお風呂を済ませて、寝室に行こうと言うべきだ。
だけどきっと、ベッドに入ってしまえば彼はすぐに寝入ってしまうから。最近あまり旦那さまとゆっくり過ごせていない私は、少し寂しくて。
「……礼?」
彼の眼鏡を無言で外してローテーブルに置き、ソファの隣に腰かける。
そうして皐月くんの頭にそっと手を回すと、自分の太腿の上に寝転ぶように誘導した。いわゆる、膝枕である。
「皐月くん、いつもお疲れさま。がんばってて、えらいえらい」
わざと子どもにするような口調で言いながら、頭を撫でる。お風呂前だからまだワックスが残る、少し硬い髪。
束の間驚いたように目を丸くしていた彼だったけど、すぐにふにゃりと表情を緩める。
「……ありがとう。すごいなこれ、めちゃくちゃ癒される」
「ふふ、ほんと? 私もこのアングルで見る皐月くんが新鮮で、結構楽しいよ」
「なるほど」
言って皐月くんが、じっとこちらを見つめてくる。その眼差しに、思わずドキリとした。
「ここ。見えにくいけど、ホクロあるよな」
伸びてきた皐月くんの指先が私の顎下に触れる。ぴく、とつい体を揺らした私を、彼はおもしろそうに見ていて。
……ドキドキさせられてばかりで、悔しい。私も負けじと、口を開く。
「皐月くんだって、」
つぶやくと半身を倒し、彼の左耳の上部にちょんと唇をつけた。
「実はここに、ホクロあるでしょう?」
固まる彼へ、してやったりとイタズラっぽく微笑む。
すると不意に、皐月くんが私の太腿から勢いよく起き上がった。そうして反応が遅れた私の背中と膝裏に手を回し、いとも簡単に抱き上げる。
「きゃあっ!」
とっさに首もとへ抱きつく私を、皐月くんはとてもさわやかな笑顔で覗き込んだ。
「かわいい奥さんが癒してくれたお礼に──今日は一緒に風呂に入って、俺も奥さんに尽くそうかな。シャンプーとか、体洗ったりとか」
「えっ、……そ、そんな、お気遣いなく」
身の危険を感じ、思わずそう答えていた。けれど彼は、構わず私の首筋にキスをする。
「諦めて。俺を元気にした、礼が悪い」
きっとこのあと自分が“大変な目”に遭うとわかっていて、けれどもその蠱惑的な眼差しに、まんまと胸がときめいてしまったので。
私は観念し、彼の胸に擦り寄ったのだった。
「……ん?」
ハ、としたように、彼がこちらを向く。近頃仕事が忙しそうな彼は、帰宅して遅めの晩ごはんを済ませてしまえばもうすっかり眠そうだ。今だって、つけているテレビを観るでもなくソファでうとうとしていた。
早くお風呂を済ませて、寝室に行こうと言うべきだ。
だけどきっと、ベッドに入ってしまえば彼はすぐに寝入ってしまうから。最近あまり旦那さまとゆっくり過ごせていない私は、少し寂しくて。
「……礼?」
彼の眼鏡を無言で外してローテーブルに置き、ソファの隣に腰かける。
そうして皐月くんの頭にそっと手を回すと、自分の太腿の上に寝転ぶように誘導した。いわゆる、膝枕である。
「皐月くん、いつもお疲れさま。がんばってて、えらいえらい」
わざと子どもにするような口調で言いながら、頭を撫でる。お風呂前だからまだワックスが残る、少し硬い髪。
束の間驚いたように目を丸くしていた彼だったけど、すぐにふにゃりと表情を緩める。
「……ありがとう。すごいなこれ、めちゃくちゃ癒される」
「ふふ、ほんと? 私もこのアングルで見る皐月くんが新鮮で、結構楽しいよ」
「なるほど」
言って皐月くんが、じっとこちらを見つめてくる。その眼差しに、思わずドキリとした。
「ここ。見えにくいけど、ホクロあるよな」
伸びてきた皐月くんの指先が私の顎下に触れる。ぴく、とつい体を揺らした私を、彼はおもしろそうに見ていて。
……ドキドキさせられてばかりで、悔しい。私も負けじと、口を開く。
「皐月くんだって、」
つぶやくと半身を倒し、彼の左耳の上部にちょんと唇をつけた。
「実はここに、ホクロあるでしょう?」
固まる彼へ、してやったりとイタズラっぽく微笑む。
すると不意に、皐月くんが私の太腿から勢いよく起き上がった。そうして反応が遅れた私の背中と膝裏に手を回し、いとも簡単に抱き上げる。
「きゃあっ!」
とっさに首もとへ抱きつく私を、皐月くんはとてもさわやかな笑顔で覗き込んだ。
「かわいい奥さんが癒してくれたお礼に──今日は一緒に風呂に入って、俺も奥さんに尽くそうかな。シャンプーとか、体洗ったりとか」
「えっ、……そ、そんな、お気遣いなく」
身の危険を感じ、思わずそう答えていた。けれど彼は、構わず私の首筋にキスをする。
「諦めて。俺を元気にした、礼が悪い」
きっとこのあと自分が“大変な目”に遭うとわかっていて、けれどもその蠱惑的な眼差しに、まんまと胸がときめいてしまったので。
私は観念し、彼の胸に擦り寄ったのだった。