ひと晩の交わりで初恋の人の子どもを身ごもったら、実は運命の番で超溺愛されてしまいました~オメガバース~
「俺、店長を探しに店の外を見てきますので、美羽さんは店長が戻ってきたときのためにも、ここで待機しててもらってもいいですか?」
頼もしい声の時任くんが手にしていた子機を、私に渡してきた。
その行為に、はっと現実に引き戻された私は、緊急速報よりもまずは店長の所在を確認するほうが先だと自覚する。
「わかったわ。なにかあったら、必ずお店に電話してね」
子機を受け取った私は、自分にも言い聞かせるように大きくひとつ頷いた。
「じゃあ、行ってきます」
真剣な面持ちで、時任くんは会釈した。
「お願いします」
私がそう答えた瞬間だった。
呑気な、聞きなれた柔らかい通る声が店の外から聞こえてくる。
「あれぇ~! 時任くん、どうしたの?」
ドアの向こう。
攫われたかもしれないと思っていた最上さんが、背後に背の高い二名の男性を伴い、駅のある方角から歩いて来る。
立ち姿からして洗練されたような雰囲気をまとうふたりは、なんとなくアルファのようだ。
と、同時に懐かしい甘い匂いを感じた。
どこかで嗅いだことがあるような……。
記憶を遡ろうとしたが、それよりも突如目の前に現れた人物に意識が向いた。
「店長!!」
私と時任くんの声が同時に重なった。
「どうしたの、ふたりとも深刻そうな顔をして」
「どうしたもなにも、なんで黙ってどこかに消えてしまったんですか!」
時任くんが感情を露わにして、最上さんに二人して心配したことを伝える。
けれど当の本人は、え? という顔をしてみせた。
「あれ、前から話してなかったっけ? 今日、三時から来客があるってこと。私はその人たちを駐車場に誘導するために、五分前くらいから店を離れるってことを」
「えっ?」
またしても私と時任くんは同じタイミングで驚き、ふたりして顔を見合わせた。
今日、何度目だろう。息が合う。
それから私は、小さな声でつぶやいた。
「聞いて、ませんけど……」
つまり私たちはふたりとも、事前に今日の来客のことを知らされていなかったようだ。
すると、最上さんの背後にいた男性のうちのひとり。堅苦しいスーツを着用していたほうの眼鏡の男性が、コホンと咳払いをした。
「すみませんが、こちらで立ち往生してますと……」
渋い声が最上さんに向かって注意を濁す。
「あ、そうでしたね。すみません。とりあえず店のなかへ入ってください」
最上さんは後ろにいたふたりを振り仰ぐと、道を開けるように一歩横に避けて、手を伸ばして店内を促す。
背後にいたふたりは無言で会釈すると、まずパーカーのフードを目深にかぶった全身黒服の時任くんよりも背の高そうな男が、先に入室した。
次いでスーツの男が入ると、最後に最上さんが店の前に下げられている「Open」の札を反対側にして、店内へ入る。
それからまだ営業時間だというのに施錠した。
よほど外部に知られたらまずい来客なのだろうか。
頼もしい声の時任くんが手にしていた子機を、私に渡してきた。
その行為に、はっと現実に引き戻された私は、緊急速報よりもまずは店長の所在を確認するほうが先だと自覚する。
「わかったわ。なにかあったら、必ずお店に電話してね」
子機を受け取った私は、自分にも言い聞かせるように大きくひとつ頷いた。
「じゃあ、行ってきます」
真剣な面持ちで、時任くんは会釈した。
「お願いします」
私がそう答えた瞬間だった。
呑気な、聞きなれた柔らかい通る声が店の外から聞こえてくる。
「あれぇ~! 時任くん、どうしたの?」
ドアの向こう。
攫われたかもしれないと思っていた最上さんが、背後に背の高い二名の男性を伴い、駅のある方角から歩いて来る。
立ち姿からして洗練されたような雰囲気をまとうふたりは、なんとなくアルファのようだ。
と、同時に懐かしい甘い匂いを感じた。
どこかで嗅いだことがあるような……。
記憶を遡ろうとしたが、それよりも突如目の前に現れた人物に意識が向いた。
「店長!!」
私と時任くんの声が同時に重なった。
「どうしたの、ふたりとも深刻そうな顔をして」
「どうしたもなにも、なんで黙ってどこかに消えてしまったんですか!」
時任くんが感情を露わにして、最上さんに二人して心配したことを伝える。
けれど当の本人は、え? という顔をしてみせた。
「あれ、前から話してなかったっけ? 今日、三時から来客があるってこと。私はその人たちを駐車場に誘導するために、五分前くらいから店を離れるってことを」
「えっ?」
またしても私と時任くんは同じタイミングで驚き、ふたりして顔を見合わせた。
今日、何度目だろう。息が合う。
それから私は、小さな声でつぶやいた。
「聞いて、ませんけど……」
つまり私たちはふたりとも、事前に今日の来客のことを知らされていなかったようだ。
すると、最上さんの背後にいた男性のうちのひとり。堅苦しいスーツを着用していたほうの眼鏡の男性が、コホンと咳払いをした。
「すみませんが、こちらで立ち往生してますと……」
渋い声が最上さんに向かって注意を濁す。
「あ、そうでしたね。すみません。とりあえず店のなかへ入ってください」
最上さんは後ろにいたふたりを振り仰ぐと、道を開けるように一歩横に避けて、手を伸ばして店内を促す。
背後にいたふたりは無言で会釈すると、まずパーカーのフードを目深にかぶった全身黒服の時任くんよりも背の高そうな男が、先に入室した。
次いでスーツの男が入ると、最後に最上さんが店の前に下げられている「Open」の札を反対側にして、店内へ入る。
それからまだ営業時間だというのに施錠した。
よほど外部に知られたらまずい来客なのだろうか。