ひと晩の交わりで初恋の人の子どもを身ごもったら、実は運命の番で超溺愛されてしまいました~オメガバース~
「そうですね。四人しかスタッフがいないので、仲は悪くないと思います」
「そうなんですね。とくに時任さんは城戸さんと仲が良さそうに見えましたので、特別な関係なのかと勘違いしてしまいました」
語尾へいくにつれて、久我さんの声色が白々しいほどに甘くなっていく。
隣に立つ櫻井さんが、一瞬凍りついたような顔をした。
けれど、すぐにいつもの神経質そうな無表情へと戻る。
些細なその変化を見逃さなかった私は、やっぱり久我さんの機嫌が悪いのだと、自身の認識が間違っていなかったことを再確認する。
でも、なぜ不機嫌なんだろう。
なにが原因なんだろう。
さりげなく私に微笑みかけていたときは、そこまで不機嫌さを感じなかったのに。
いや、もしかしてすでにあのときから……?
私に微笑みかけていたときよりも、もっと前の段階で不機嫌だったとしたら?
この店へ入って来て、私の顔を目にした瞬間からすでに不機嫌だったとしたら?
不機嫌なその理由が、もし四年前に番となったはずの私が、突然姿を消したことにあったとしたら……?
原因を追究すればするほど、非は自分にあるかもしれないと悟った私は、たちまち顔色を失くしていく。
時任くんは私の異変に気がつかないのか、それとも気がついているがゆえなのか。
一向に久我さんとの会話を辞めるどころか、火に油を注ぐのではないかと思われるほど、私との仲良しエピソードを披露しようとしている。
「社員の美羽さんは年が近いこともありますし、俺がここでバイトを始めたときから色々個別に仕事を教わってお世話になっている方なので、もしかしたら一番仲はよいかもしれません」
とは言っても俺の勘違いかもしれませんが、と照れ笑いする時任くんは、完全に久我さんの表情を見誤っていた。
ごめん、時任くん! これ以上、久我さんの前で私の話をしないで!
願うように時任くんを軽く睨みつけるが、にこっと笑みを返されるだけで終わってしまう。
「たしかに。今だって時任くんに、なにやらアイコンタクトしてきたみたいだしね。本当に仲がいいね。まるで恋人同士みたいだ」
明らかに表情とは違う刺々しい声で、久我さんは時任くんと私を交互に見ながら、なにを納得したのかうんうんと頷いていた。
お願いだから時任くん、これ以上久我さんを刺激しないでください! と直接言えたらどんなにいいだろうか。
同時に、久我さんは過去に一夜をともにしただけの私のことなど、どうも思っていないのだと知って、悲しくなってしまう。
トントンと、軽く時任くんの二の腕を人差し指でつついた私は、「これ以上余計なことは言わないで!」の意味を込めて首を軽く左右に振った。
それでもやはり時任くんには、そのジェスチャーの意味が伝わらなかったようだ。
とうとう余計なことを久我さんの前で口走ってしまう。
「でも残念ながら俺は、美羽さんの恋人にはなれないんです。実は美羽さんには、」
無責任に時任くんが、この場で爆弾を投下しはじめる。
そのときだった。
「すみません、大変お待たせいたしました~」
キッチンから最上さんが戻ってくる。
そして微妙な空気となっていた店内を、最上さんは不思議そうな顔をしてぐるっと一周見渡した。
「……なにかあったのかしら?」
「いえ、お互いに自己紹介をしていました」
即座に時任くんが反応する。
「そうだったの? 若い者同士だけだと、やはり話が進むものなのね」
ふふ、と笑った最上さんは、それから思い出したように久我さんへとあることを確認した。
「そう言えばキョウさん、あなた今月で芸能界をお休みするそうじゃない」
あ……そう言えば、ラジオの緊急速報で久我さんがお仕事を休業するって、パーソナリティの人も話していたっけ。
「そうなんですね。とくに時任さんは城戸さんと仲が良さそうに見えましたので、特別な関係なのかと勘違いしてしまいました」
語尾へいくにつれて、久我さんの声色が白々しいほどに甘くなっていく。
隣に立つ櫻井さんが、一瞬凍りついたような顔をした。
けれど、すぐにいつもの神経質そうな無表情へと戻る。
些細なその変化を見逃さなかった私は、やっぱり久我さんの機嫌が悪いのだと、自身の認識が間違っていなかったことを再確認する。
でも、なぜ不機嫌なんだろう。
なにが原因なんだろう。
さりげなく私に微笑みかけていたときは、そこまで不機嫌さを感じなかったのに。
いや、もしかしてすでにあのときから……?
私に微笑みかけていたときよりも、もっと前の段階で不機嫌だったとしたら?
この店へ入って来て、私の顔を目にした瞬間からすでに不機嫌だったとしたら?
不機嫌なその理由が、もし四年前に番となったはずの私が、突然姿を消したことにあったとしたら……?
原因を追究すればするほど、非は自分にあるかもしれないと悟った私は、たちまち顔色を失くしていく。
時任くんは私の異変に気がつかないのか、それとも気がついているがゆえなのか。
一向に久我さんとの会話を辞めるどころか、火に油を注ぐのではないかと思われるほど、私との仲良しエピソードを披露しようとしている。
「社員の美羽さんは年が近いこともありますし、俺がここでバイトを始めたときから色々個別に仕事を教わってお世話になっている方なので、もしかしたら一番仲はよいかもしれません」
とは言っても俺の勘違いかもしれませんが、と照れ笑いする時任くんは、完全に久我さんの表情を見誤っていた。
ごめん、時任くん! これ以上、久我さんの前で私の話をしないで!
願うように時任くんを軽く睨みつけるが、にこっと笑みを返されるだけで終わってしまう。
「たしかに。今だって時任くんに、なにやらアイコンタクトしてきたみたいだしね。本当に仲がいいね。まるで恋人同士みたいだ」
明らかに表情とは違う刺々しい声で、久我さんは時任くんと私を交互に見ながら、なにを納得したのかうんうんと頷いていた。
お願いだから時任くん、これ以上久我さんを刺激しないでください! と直接言えたらどんなにいいだろうか。
同時に、久我さんは過去に一夜をともにしただけの私のことなど、どうも思っていないのだと知って、悲しくなってしまう。
トントンと、軽く時任くんの二の腕を人差し指でつついた私は、「これ以上余計なことは言わないで!」の意味を込めて首を軽く左右に振った。
それでもやはり時任くんには、そのジェスチャーの意味が伝わらなかったようだ。
とうとう余計なことを久我さんの前で口走ってしまう。
「でも残念ながら俺は、美羽さんの恋人にはなれないんです。実は美羽さんには、」
無責任に時任くんが、この場で爆弾を投下しはじめる。
そのときだった。
「すみません、大変お待たせいたしました~」
キッチンから最上さんが戻ってくる。
そして微妙な空気となっていた店内を、最上さんは不思議そうな顔をしてぐるっと一周見渡した。
「……なにかあったのかしら?」
「いえ、お互いに自己紹介をしていました」
即座に時任くんが反応する。
「そうだったの? 若い者同士だけだと、やはり話が進むものなのね」
ふふ、と笑った最上さんは、それから思い出したように久我さんへとあることを確認した。
「そう言えばキョウさん、あなた今月で芸能界をお休みするそうじゃない」
あ……そう言えば、ラジオの緊急速報で久我さんがお仕事を休業するって、パーソナリティの人も話していたっけ。