ひと晩の交わりで初恋の人の子どもを身ごもったら、実は運命の番で超溺愛されてしまいました~オメガバース~
「デリかがみ」は全国展開の弁当屋だ。
定休日は土日。
営業時間は、平日の朝の十時から夜の八時までである。
とはいっても開店前に仕込みがあるので、私は八時に娘を保育園に送ったあと、店に直行し夕方の五時まで働くシフトだ。
その場で調理して、温かいものは熱々のまま。冷たいものは冷たいままで。できたてのお弁当をストレスなく、安全に美味しくをモットーとしてお客さんに食べてもらうのがウリのお店だ。
また、「デリ カガミ」は働く側にも優しいお店である。
とくに、毎月発情期が訪れることで、働くこともままならない第二次性のオメガを、積極的にスタッフとして採用する方針を大々的に打ち出している先進的な企業だ。
幼い頃、私は料理上手な母に愛する人たちに手料理を作る楽しさを学んだ。
「おいしいよ」と、自分の作った料理を食べてもらえることがとにかく嬉しかった。
それだけではない。
料理という手段は亡き母が遺してくれた無形の遺産でもあった。だから母が遺してくれた想いや味を味覚と視覚を通じて、たくさんの人の記憶に残したくて、いつしか将来は料理に関する仕事に就きたいと考えるようになっていた。
高校を卒業後に施設を出て、学費半分免除の奨学生として通った大学では、栄養学を学んで管理栄養士の資格を取得した。
けれど今から四年前、オメガの私は大学卒業直前に新たな命を身ごもってしまった。
予想外の出来事で驚いたが、初恋の人との子どもだったので諦める選択肢は考えられなかったのだ。
当時、卒業と同時に食品加工会社でのバイトの内定が決まっていたのだが、人事に身重であることを告げると、内定は白紙に戻されてしまった。
仕方がないことだ。
分かっていた。
まだ学生で、月に一度発情期のあるオメガで、しかも施設育ちですでに親は亡きものに世間が厳しいという現実を。
そのうえ、授かった命をこのタイミングで産むと決めたのは自分の意志だ。
大学卒業と同時に奨学金の支払いと、日々の生活費の支払いに、お腹の子どもにかかる支払いがはじまる。
だから一日も早くお腹が大きくなって動けなくなる前に、当面を凌げる稼ぎ口を見つける必要があった。
料理をする仕事がいいなんて希望はかなぐり捨て、とにかく私は複雑な条件を持っても働かせてくれる職場を探し続けた。
しかしやはり私のような特殊な境遇のオメガを雇ってくれるところは、どこにもなかった。
ようやく最後にたどりついたのが、偶然通りかかった弁当屋の「デリかがみ」だ。
店先に求人募集が張られているのを目にし、ダメ元で交渉に来た私を採用してくれたのが、今も店長を務める最上さんだった。
身重の私と、お腹の子どもの命。両方を救ってくれたこの店には、心底感謝しても感謝しきれない。
恩返しのためにも美羽は、この店のためにできることがあれば、なんでもすると覚悟している。
どんな仕事であっても――。
定休日は土日。
営業時間は、平日の朝の十時から夜の八時までである。
とはいっても開店前に仕込みがあるので、私は八時に娘を保育園に送ったあと、店に直行し夕方の五時まで働くシフトだ。
その場で調理して、温かいものは熱々のまま。冷たいものは冷たいままで。できたてのお弁当をストレスなく、安全に美味しくをモットーとしてお客さんに食べてもらうのがウリのお店だ。
また、「デリ カガミ」は働く側にも優しいお店である。
とくに、毎月発情期が訪れることで、働くこともままならない第二次性のオメガを、積極的にスタッフとして採用する方針を大々的に打ち出している先進的な企業だ。
幼い頃、私は料理上手な母に愛する人たちに手料理を作る楽しさを学んだ。
「おいしいよ」と、自分の作った料理を食べてもらえることがとにかく嬉しかった。
それだけではない。
料理という手段は亡き母が遺してくれた無形の遺産でもあった。だから母が遺してくれた想いや味を味覚と視覚を通じて、たくさんの人の記憶に残したくて、いつしか将来は料理に関する仕事に就きたいと考えるようになっていた。
高校を卒業後に施設を出て、学費半分免除の奨学生として通った大学では、栄養学を学んで管理栄養士の資格を取得した。
けれど今から四年前、オメガの私は大学卒業直前に新たな命を身ごもってしまった。
予想外の出来事で驚いたが、初恋の人との子どもだったので諦める選択肢は考えられなかったのだ。
当時、卒業と同時に食品加工会社でのバイトの内定が決まっていたのだが、人事に身重であることを告げると、内定は白紙に戻されてしまった。
仕方がないことだ。
分かっていた。
まだ学生で、月に一度発情期のあるオメガで、しかも施設育ちですでに親は亡きものに世間が厳しいという現実を。
そのうえ、授かった命をこのタイミングで産むと決めたのは自分の意志だ。
大学卒業と同時に奨学金の支払いと、日々の生活費の支払いに、お腹の子どもにかかる支払いがはじまる。
だから一日も早くお腹が大きくなって動けなくなる前に、当面を凌げる稼ぎ口を見つける必要があった。
料理をする仕事がいいなんて希望はかなぐり捨て、とにかく私は複雑な条件を持っても働かせてくれる職場を探し続けた。
しかしやはり私のような特殊な境遇のオメガを雇ってくれるところは、どこにもなかった。
ようやく最後にたどりついたのが、偶然通りかかった弁当屋の「デリかがみ」だ。
店先に求人募集が張られているのを目にし、ダメ元で交渉に来た私を採用してくれたのが、今も店長を務める最上さんだった。
身重の私と、お腹の子どもの命。両方を救ってくれたこの店には、心底感謝しても感謝しきれない。
恩返しのためにも美羽は、この店のためにできることがあれば、なんでもすると覚悟している。
どんな仕事であっても――。