ひと晩の交わりで初恋の人の子どもを身ごもったら、実は運命の番で超溺愛されてしまいました~オメガバース~
「大きいよ」
私は弁当を食べる手を止め、持参した保冷できるタンブラーに手を掛けた。
「一八〇センチって、大きいほうですか? 俺の周り、みんな大きいので自分じゃよくわからないんですけど……」
時任くんは背負っていたデイパックを裏の出入り口のドアに立てかけるように置いて、そのなかから店指定のエプロンとバンダナを取り出す。
過去、エプロンのサイズはXLでもきついと時任くんがぼやいていたものだ。
一般的にXLでもきつい体型は、大きいと呼べるだろう。
そうでなければ、店の制服もそれ以上のサイズを用意しているはずだ。
「そっかぁ。アルファの学生が多い大学だもんね。背の高い人に囲まれていたら分からないよね」
目を見開いた私は、エプロンとバンダナを手際よく身につけていく時任くんの全身へ下から上へと視線を滑らせる。
最近の子は発達がいいと言われているが、ベータの時任くんはまさにアルファ顔負けの外見だ。
アルファの容姿の特徴として、男性でも女性でも背が高いことや、モデルのように華やかな容姿であることが挙げられる。
和装が似合いそうな時任くんの純日本人の顔立ちは、私が番った初恋の人とはまた違う系統だが、アルファと言ってもなんの遜色もないほどの塩顔イケメンだ。
しかも、実直さが滲み出ていて好感が持てる。
かもし出す雰囲気から、エリート然としているアルファとは違う第二次性なのだろうことは明らかだが、人としての魅力に溢れている人だ。
「そうっすね……というか、男性アルファのことだったら、番がいらっしゃった美羽さんのほうが、くわしいんじゃないんですか?」
つい悪気なく時任くんは言ってしまったのだろう。
直後、ほんの僅か、曇った表情を見せた私が未婚のシングルマザーであることを思い出したらしい。
はっとした顔をして、すぐに「すみません」と謝罪してくる。
「いや、いいの。番なしでも産むって決めたのは私だから」
苦笑する私を見て、さらに申し訳ないと思ったのか、時任くんは唇を引き結んで口ごもってしまう。
「気にしないで。それなりに苦労は絶えないけど、好きな人の子どもを産んで、かわいい子どもと毎日暮らせるなんて最高に幸せだよ」
本心から私はにっこりと微笑む。
「いつか時任くんもそう思える相手と巡り合えるといいね」
これも本心だ。
時任くんは心根の優しい人だから、いい子と出逢って、すてきな恋愛をしてほしいと思っている。
すると時任くんがなにか決意するように、口を開いた。
「あ、あの……俺、」
「うん?」
時任くんをじっと見つめる。
そのときだった。
レジ近くの電話の呼び出し音がけたたましく鳴って、私たちの会話が中断される。
最上さんは接客中なのだろうか。
休憩とはいえ、時任くんとの会話に気を取られて店内の様子まで、意識を傾けていなかった。
「俺、電話出てきます」
時任くんは私から視線を逸らし、キッチンを出ていく。
私は弁当を食べる手を止め、持参した保冷できるタンブラーに手を掛けた。
「一八〇センチって、大きいほうですか? 俺の周り、みんな大きいので自分じゃよくわからないんですけど……」
時任くんは背負っていたデイパックを裏の出入り口のドアに立てかけるように置いて、そのなかから店指定のエプロンとバンダナを取り出す。
過去、エプロンのサイズはXLでもきついと時任くんがぼやいていたものだ。
一般的にXLでもきつい体型は、大きいと呼べるだろう。
そうでなければ、店の制服もそれ以上のサイズを用意しているはずだ。
「そっかぁ。アルファの学生が多い大学だもんね。背の高い人に囲まれていたら分からないよね」
目を見開いた私は、エプロンとバンダナを手際よく身につけていく時任くんの全身へ下から上へと視線を滑らせる。
最近の子は発達がいいと言われているが、ベータの時任くんはまさにアルファ顔負けの外見だ。
アルファの容姿の特徴として、男性でも女性でも背が高いことや、モデルのように華やかな容姿であることが挙げられる。
和装が似合いそうな時任くんの純日本人の顔立ちは、私が番った初恋の人とはまた違う系統だが、アルファと言ってもなんの遜色もないほどの塩顔イケメンだ。
しかも、実直さが滲み出ていて好感が持てる。
かもし出す雰囲気から、エリート然としているアルファとは違う第二次性なのだろうことは明らかだが、人としての魅力に溢れている人だ。
「そうっすね……というか、男性アルファのことだったら、番がいらっしゃった美羽さんのほうが、くわしいんじゃないんですか?」
つい悪気なく時任くんは言ってしまったのだろう。
直後、ほんの僅か、曇った表情を見せた私が未婚のシングルマザーであることを思い出したらしい。
はっとした顔をして、すぐに「すみません」と謝罪してくる。
「いや、いいの。番なしでも産むって決めたのは私だから」
苦笑する私を見て、さらに申し訳ないと思ったのか、時任くんは唇を引き結んで口ごもってしまう。
「気にしないで。それなりに苦労は絶えないけど、好きな人の子どもを産んで、かわいい子どもと毎日暮らせるなんて最高に幸せだよ」
本心から私はにっこりと微笑む。
「いつか時任くんもそう思える相手と巡り合えるといいね」
これも本心だ。
時任くんは心根の優しい人だから、いい子と出逢って、すてきな恋愛をしてほしいと思っている。
すると時任くんがなにか決意するように、口を開いた。
「あ、あの……俺、」
「うん?」
時任くんをじっと見つめる。
そのときだった。
レジ近くの電話の呼び出し音がけたたましく鳴って、私たちの会話が中断される。
最上さんは接客中なのだろうか。
休憩とはいえ、時任くんとの会話に気を取られて店内の様子まで、意識を傾けていなかった。
「俺、電話出てきます」
時任くんは私から視線を逸らし、キッチンを出ていく。