教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「兄上」

 ゴホン、とオーガストが咳払いをすると、イザークがパッとエレノアから離れる。

「す、すまない」
「いえ……」

(この人は、自分が顔が良いということをわかってないのかしら。心臓が破裂しそうだから、おかしな距離感をどうにかしてほしい……)

「本題に入ろうか」

 顔を赤らめて距離を取ったエレノアたちに、オーガストがコホン、と咳払いをした。

「結婚、と言い出された理由ですね」

 先に本題だろう、とまたまた心の中でツッコミを入れながらも、エレノアはにっこりと笑って大人しく続きを聞く。

(兄弟揃って、本当に……)

 呆れつつも、エレノアはオーガストを見つめる。

「エレノア殿、貴方は聖女ですね」
「……追放された「元」ですが」

 やっぱり聖女だとはバレていた。

 聞かれた質問に対して、エレノアはあえて「元」を強調した。

「元、ですか……」

 エレノアの返答に、オーガストは自嘲気味に口の端を上げる。

(何だろう?)

 エレノアはその笑みに心の中がザワザワとして不安になる。

「大丈夫だ、エレノア殿」

 そんなエレノアを見たイザークが、エレノアの手をギュッと握る。

 優しい眼差し、優しい声色、その手の温かさに、エレノアの心が一気に凪いだ。

(騎士様に間近に来られて、さっきはあんなに落ち着かなかったのに、今は、酷く落ち着く)

 きっと不安なエレノアを察知して、安心させてくれようとしてくれているイザークの優しさが伝わったからだろう、とエレノアは思った。

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