教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「お疲れ様」

 果実飴が完売した頃、夕日が差し掛かっていた。

 店の中から女将が出てきて、エレノアに労いの言葉をかける。

「今日も全部完売したね」
「はい!」
「エレノアが来てくれてから、この果実店は息を吹き返したよ。ありがとうね」
「いえ、こちらこそ、身元不明な私なんかを住み込みで置いてくれて感謝しています」

 エレノアが女将に深々と頭を下げると、ポンポン、と彼女は頭を撫でた。

(優しい女将さんのおかげで、私は今生きていられる)

 エレノアは、教会で働く聖女だった。

 ある日を境に、聖女の奇跡の力が弱まり、昨年の冬の終わりに教会を追い出された。

 元々孤児院出身だったエレノアは、帰る場所も行く宛も無く、彷徨って行き倒れていた所を助けてくれたのが、この果実店の女将だった。

 果実店の経営が苦しいながらも、エレノアを置いてくれ、雇ってくれた女将にエレノアは感謝をしていた。

 そんな彼女に恩返しがしたくて、エレノアが思いついたのが、果実飴だった。

 エレノアが子供の頃に一度見たことがあった、果実を飴で加工したもの。

 その時、飴がもっと薄かったら、果実が活かされて美味しいのになあ、とエレノアは思っていたのだ。

 この果実店の果実は美味しい。その美味しさを宣伝するために、エレノアは女将に果実飴を提案した。

 女将はすぐに提案に乗ってくれて、美味しい飴を研究を重ねて二人で作り上げた。
 
 力が弱まっているものの、エレノアは聖女の奇跡で飴を極限まで薄くすることが出来た。

 女将には聖女だったことは話しておらず、少しだけ魔法が使える、ということにしてある。

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