教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!

11.旦那様は笑わない?

「ええと、ここは病院でしょうか……」

 自室だと通された部屋を見て、エレノアは入口で驚愕していた。

「エレノア様のお部屋ですが?」

 そんなエレノアをお構いなしに、グイグイと部屋へと押しやるエマ。

(え、お貴族様の部屋ってこんなに広いの?! 何回か行った騎士様の療養所並みに広いわ……!)

 エレノアの比喩出来る部屋と言えば、行ったことのある騎士団専用の病院だけだった。

 比較するには広さだけだし、中の家具の豪奢さは病院とも比較にならないものだった。

「確かに上官クラスの病室だと、広くて豪華ですね」

 エマはエレノアに話を合わせたつもりだが、エレノアにはハテナマークが頭に浮かぶだけだった。

 それもそのはず。エレノアのような下位の聖女が上官クラスの治癒に赴くことは無い。そういうのは貴族令嬢である聖女が赴くのだ。そこで見初られる、なんて話も聞いたことがある。

 どちらにしても、エレノアには関係のないことだった。エレノアたちが赴くのは、そんな上官たちの下で働く騎士たちの元だからだ。

 彼らは前線で戦うため、酷い怪我の者も多かった。大きな魔物討伐は頻繁には無いものの、エレノアもそういった場合は駆り出され、必死に駆けずり回った。

(うーん、私が見た病室はこのくらいの広さにベットが沢山並んでいた。上官レベルだと一人でこの広さを使うの?!)

 やっぱり貴族はいけ好かない、とエレノアが再認識したところで、エマが申し訳無さそうな顔で言った。

「申し訳ございません……エレノア様にとって教会の生活は思い出したくもないことですのに」

 頭を下げるエマに、エレノアは慌てて駆け寄る。

「気にしないで! 私、教会の頃のことは忘れたから!」

 全部かと言われれば嘘になるが、エレノアは本心からそう言った。

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