教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
エレノアは優しい女将のおかげで楽しく自由に暮らしていた。イザークが現れてから溜息が増えたものの、今では彼が近付いて来た理由も知っている。
自分にまだ力があるとは思えないものの、教会に二度と戻りたくないエレノアにとって、この結婚は有り難いものだった。イザークのおかしい距離感を除いては。
「……エレノア様はまだまだ幸せになれますわ」
「そうかな?」
エマの言葉にえへへ、とエレノアが照れ笑いを見せると、エマは「そうですよ」と頷いた。
幸せだと思っていた、いや思い込まされていたあの教会での暮らしを思えば、未だに腹が立つし、何とも言えない気持ちになる。
「今でも充分に幸せじゃないかなあ?」
あの頃を思えば、自分が運が良いように思えた。
「女将さんに拾ってもらえて、今は教会に見つかりそうな危険を事前に保護してもらって……うん、私、幸せじゃないかなあ?」
笑顔で自分を指差すエレノアに、エマは静かに笑った。
「エレノア様は無欲ですわね……イザーク様同様に」
「ザーク様?」
「あの方が心から笑った所を私は見たことがありませんでした。……今日までは」
「ん?」
静かに微笑んでいたエマが、最後の言葉だけは、可笑しそうに笑って言った。
「ザーク様が、笑わない?」
信じられない物を見るような目でエレノアがエマを見れば、彼女はとびきり嬉しそうな顔で言った。
「ふふ、笑わないどころか、感情も見せない方でしたわ」
エマの言葉に半信半疑のエレノアは、目を瞠った。
(ザーク様が感情を見せない……?)
エレノアはイザークとのやり取りを脳裏に思い浮かべる。
子犬のように縋る瞳を向けたり、嬉しそうに微笑んだり、悲しそうにしたり。何とも表情豊かである。そして、今日はエレノアの指を舐めたかと思うと、甘くはにかんだ。
(うわわわわ!!)
エレノアは今日の飴屋での甘いやり取りを思い出して、顔が林檎のように真っ赤になった。
「信じられません?」
その様子を見ていたエマがくすりと笑いながらエレノアに視線を向けると、エレノアは力一杯頷いた。
「エレノア様は凄い方ですね」
(どういう意味だろう?)
エマは目の端に涙を浮かべるほどなのに、笑いを堪えていたかと思うと、エレノアを称賛した。
その言葉が馬鹿にしたり、からかったりしているものでは無いとわかるため、エレノアは増々疑問を深めた。
「はい、では今日はオーガスト様も交えて夕食会ですから、支度しましょうね!」
まだ首を傾げていたエレノアに、エマは両手を合わせて声を弾ませた。
「あの、エマさん、私、自分のことは自分で出来るから」
まだ疑問が残りつつも、エマが話を進めるので、エレノアも話についていくしかない。
お世話を辞退しようと申し出れば、エマはニヤリと笑って言った。
「あら、エレノア様? ドレスは一人では着られませんよ? それと、私のことはエマとお呼びください」
部屋にあったクローゼットの扉をスライドしてエマが開ければ、そこには沢山のドレスがズラリと並んでいた。
「あの、これ……」
目を瞬きながら、エレノアが嫌な予感を持てば、それは的中する。
「はい! イザーク様がエレノア様のために用意したお着替えです!」
エマの言葉にエレノアはくらりと目眩を覚えるのだった。
自分にまだ力があるとは思えないものの、教会に二度と戻りたくないエレノアにとって、この結婚は有り難いものだった。イザークのおかしい距離感を除いては。
「……エレノア様はまだまだ幸せになれますわ」
「そうかな?」
エマの言葉にえへへ、とエレノアが照れ笑いを見せると、エマは「そうですよ」と頷いた。
幸せだと思っていた、いや思い込まされていたあの教会での暮らしを思えば、未だに腹が立つし、何とも言えない気持ちになる。
「今でも充分に幸せじゃないかなあ?」
あの頃を思えば、自分が運が良いように思えた。
「女将さんに拾ってもらえて、今は教会に見つかりそうな危険を事前に保護してもらって……うん、私、幸せじゃないかなあ?」
笑顔で自分を指差すエレノアに、エマは静かに笑った。
「エレノア様は無欲ですわね……イザーク様同様に」
「ザーク様?」
「あの方が心から笑った所を私は見たことがありませんでした。……今日までは」
「ん?」
静かに微笑んでいたエマが、最後の言葉だけは、可笑しそうに笑って言った。
「ザーク様が、笑わない?」
信じられない物を見るような目でエレノアがエマを見れば、彼女はとびきり嬉しそうな顔で言った。
「ふふ、笑わないどころか、感情も見せない方でしたわ」
エマの言葉に半信半疑のエレノアは、目を瞠った。
(ザーク様が感情を見せない……?)
エレノアはイザークとのやり取りを脳裏に思い浮かべる。
子犬のように縋る瞳を向けたり、嬉しそうに微笑んだり、悲しそうにしたり。何とも表情豊かである。そして、今日はエレノアの指を舐めたかと思うと、甘くはにかんだ。
(うわわわわ!!)
エレノアは今日の飴屋での甘いやり取りを思い出して、顔が林檎のように真っ赤になった。
「信じられません?」
その様子を見ていたエマがくすりと笑いながらエレノアに視線を向けると、エレノアは力一杯頷いた。
「エレノア様は凄い方ですね」
(どういう意味だろう?)
エマは目の端に涙を浮かべるほどなのに、笑いを堪えていたかと思うと、エレノアを称賛した。
その言葉が馬鹿にしたり、からかったりしているものでは無いとわかるため、エレノアは増々疑問を深めた。
「はい、では今日はオーガスト様も交えて夕食会ですから、支度しましょうね!」
まだ首を傾げていたエレノアに、エマは両手を合わせて声を弾ませた。
「あの、エマさん、私、自分のことは自分で出来るから」
まだ疑問が残りつつも、エマが話を進めるので、エレノアも話についていくしかない。
お世話を辞退しようと申し出れば、エマはニヤリと笑って言った。
「あら、エレノア様? ドレスは一人では着られませんよ? それと、私のことはエマとお呼びください」
部屋にあったクローゼットの扉をスライドしてエマが開ければ、そこには沢山のドレスがズラリと並んでいた。
「あの、これ……」
目を瞬きながら、エレノアが嫌な予感を持てば、それは的中する。
「はい! イザーク様がエレノア様のために用意したお着替えです!」
エマの言葉にエレノアはくらりと目眩を覚えるのだった。