教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
 いつもとは違うシャツ姿。シャツのジャボにはサファイアの留めピンがついていおり、エレノアとお揃いコーデだ。ジャケットにスラックスといった、いかにも貴族の装いがよく似合っている。

(騎士服以外の姿、初めて見た……)

 いつもと違う装いに、王子様のようだとエレノアがぼんやりとイザークを見つめていると、エマが両手を叩いてパン、と音を出した。

 その音にエレノアがはっとすると、目の前のイザークもはっとした顔をしていた。

「エレノア、綺麗だ……」

 イザークが甘い言葉を吐くのは初めてでは無いのに、エレノアは急に恥ずかしくなって、一気に顔を赤く染めた。

 エレノアが見惚れている間、イザークも同じ気持ちだったのだと唐突に理解したからだ。

「あの、ザーク様も素敵です……」

 赤くなりながらも、おずおずと言葉に出せば、いつの間にか目の前にまで来ていたイザークが、耳のイヤリングにそっと触れる。

「お揃いだな……嬉しい」

 ふっと緩めるその甘い笑顔に、エレノアは身体中が赤くなっているのではないかという錯覚に陥った。

 恥ずかしくなって俯いていると、イザークに手を取られる。

「あ……」

 手を取られるのも初めてでは無いのに、エレノアは恥ずかしくなって、つい手を引いてしまった。

「こんなに綺麗な格好をさせてもらっているのに、ボロボロで汚いですよね」

 イザークに貰ったハンドクリームのおかげで、カサカサだった手は潤っているものの、見た目はまだ酷い物だった。

 着飾った自分と余りにもかけ離れた存在に、エレノアは思わず自虐的になってしまい、慌てて笑顔を貼り付けた。

「エレノア……」

 そんなエレノアの手を再び取ったイザークに、びくりとエレノアの肩が揺れる。

「俺のハンドクリームを使ってくれたんだな……嬉しい」

 エレノアの手に口付けをし、苺の香りを嗅ぎ取るようにイザークが鼻を付ける。

「あ、あの、ありがとうございました。ハンドクリーム、とっても嬉しかったです」

 飴屋のイチャイチャが脳裏にまた浮かび、エレノアは増々恥ずかしくなりながらも、必死にお礼を伝えた。

「そうか、気に入ってもらえたなら良かった」

 エレノアの言葉を聞いたイザークは、顔をあげると嬉しそうに破顔した。

(う、わ……!)

 イザークが今までにないくらい嬉しそうな顔を向けるので、エレノアは胸が締め付けられる想いだった。

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