教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「あ、すみません。まさか、団長がそんなに表情をくるくると変えるなんて、見たこと無かったので」

 吹き出したサミュの方を見れば、彼はお腹を抱えて笑っていた。イザークは顔を赤くしながらも、ジロリとサミュを睨んでいた。

「あ、そうだ、団長、その侍女さんに口止められたので口外はしませんが、エレノア様は、僕の命を助けてくれた聖女様だったんです!」
「エレノア……様?」

 サミュとエレノアが昔出会っていたことよりも、名前呼びに何故か反応するイザークに、エレノアは首を傾けた。

(あれ、ザーク様も何でこの反応?)

「サミュ様はエレノア様の手の甲にご挨拶もされてました」
「ちょ、エマ?!」

 何故か怖い表情のイザークに、畳み掛けるように先程の報告をエマがするので、イザークの表情が増々険しくなっていった。

(えええ? 何で?!)

「ほう、俺の妻にキスを?」

 エマの報告は「挨拶」だと言っていたのに、「キス」と直接的な表現をわざわざするイザークが怖い。

「ちょ、団長、挨拶ですよ?!」

 イザークに気圧されて、ヘラヘラしていたサミュも、青ざめている。

「あ、そうだ、俺、稽古の最中でした! 戻りますね〜。では、ご案内しましたので!!」

 わざとらしく思い出したかのような説明口調でまくし立てると、サミュはその場から慌てて逃げ出した。

 ポカン、とするエレノアを横目に、エマも一礼をする。

「それでは、私は屋敷に戻りますので、帰りはイザーク様がエレノア様をお送りください」
「ちょ?! エマ?」

 表情を一切変えず、形式的なお辞儀をすると、エマは部屋を出て行った。出て行く寸前、何故かエレノアにガッツポーズをして行った。

(エ、エマ〜! 二人きりにしないでよ~!!)

 エレノアは、何故か怖い表情のイザークと執務室に取り残されてしまった。
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