教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「エレノア様!!」

 エマの悲鳴が聞こえてきたところで、エレノアはギュッと目をつぶった。

(……? あれ、痛くない)

 来るはずの衝撃が来ず、恐る恐る目を開ければ、目の前にはイザークが立って、バスケットを受け止めていた。

「……何をしている」
「ザーク様?!」
「だ、団長……」

 突然のイザークの登場に、エレノアも驚いたが、グランはそれ以上に驚いて顔を青くしている。

 イザークの表情は見えないが、背中から伝わる怒気に、エレノアもぞくりとする。

「俺の妻に、何をしている?」
「だ、団長……そんな女が本当に? エミリア様は……」
「エミリア嬢のことは勝手な噂が流れているだけだ。放置した俺も悪いが、今は正式に結婚したことをバーンズ侯爵家もわかっているはずだが?」

 狼狽えるグランに、イザークは冷ややかに答える。

「俺の妻を侮辱し、危害を加えようとしたこと、わかっているな?」
「ひっ……!」

 ジロリと睨んだイザークに、グランが縮こまる。

「お前はしばらく謹慎だ!」
「そ、そんな、団長! 俺は団長にこそ相応しいお相手がいると……」
「くどい! 隊長の座を辞されたいか?」
「ひっ……」

 イザークの沙汰にまだ食ってかかったグランだが、隊長の座を追われるとわかると、大人しく引き下がった。

「エレノア……」

 振り返ったイザークの酷く冷たい声色が、いつもの甘い声に変わるのを聞いたエレノアは思わず安堵した。

「遅くなってすまない。君に嫌な思いをさせてしまうなんて……」

 泣きそうな表情でエレノアに駆け寄り、イザークはエレノアの肩を抱いた。
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