教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
「サミュ、まずはあなたよ」

 エレノアはサミュに微笑むと、一気に水魔法を発動し、聖女の力を込める。

(ザーク様も心配だけど、病棟で治療を受けているんだから大丈夫だよね……今は、目の前の騎士さんたちを助けなきゃ……!)

 サミュを治療したら、一気に聖水を作り上げ、急いで配らないといけない。エマに目配せすると、彼女は頷いて走り出した。

「ごめんね、サミュ!」

エレノアは聖水を作り上げると、サミュの口に一気に押し込んだ。

「がっは……」

 水を押し込まれたサミュが喉をゴクリと鳴らす。

 すると、青白かった顔色に徐々に赤みがさしていく。

「サミュ?!」
「ひ、酷いですよお、エレノア様。一度ならず、二度も口に突っ込むなんて」
「ご、ごめんね?」

 力無くも、いつもの人懐っこい笑顔を見せるサミュに、エレノアはホッと息をつく。

「エレノア様! 用意出来ました!」

 サミュが回復するのを見届けると同時に、エマが大きな桶を運んできた。

「私が聖水を作るから、騎士たちに!」
「はい!」

 エレノアは用意された桶に急いで聖水を作り出す。

「エレノア様……僕も手伝います」
「サミュ、あなたは病み上がりなんだからまだ休んでて」
「僕の仲間が苦しんでいるのに、休んでなんていられません……」
「……わかった、お願い」

 フラフラになりながらも立ち上がるサミュに、エレノアも頷く。

 エレノアが聖水を作り、エマとサミュが騎士たちの口に運ぶ。


(負傷者が多すぎるわ……! 間に合うの?!)

 焦りながらも、聖水を作り続けるエレノアの元に、オーガストがカーメレン公爵家の私兵を大勢連れてやって来た。

「義姉上!」
「オーガスト様?! ……どうして」
「こんなことだろうと思いまして。さ、急ぎますよ!」
「はい!」

 エレノアの言葉にオーガストが眼鏡をクイとさせながら苦笑いすると、すぐに切り替える。

 オーガストの的確な指示で、その場の騎士たち全員に聖水が迅速に配られた。
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