教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
 何故かオーガストに溜息を吐かれたエレノアは、いやいや、と首を振る。

「いや、だって、教会糾弾のためと、ザーク様のご令嬢避けのためだって説明してませんでした?!」
「あなた、そう言わないとあの場では頷かなかったでしょう。兄上はあんなにわかりやすいのに……」

 オーガストを責めたつもりが、逆にエレノアに非があるかのように言われ、う、となる。

「少々強引でしたが、兄上のためです。あなたの前だと兄上は人間らしくあれる」

 イザークのためだからと、当然のように話すオーガストに、エレノアは何だか丸め込まれているような気持ちになる。

「それに、エレノア様もイザーク様を好きでしょう?」

 エマが畳み掛けるようにストレートに言葉を投げかけてくるので、エレノアはまた真っ赤になってしまう。

「イザーク様を心配してここまで来たのが、正直なエレノア様の気持ちです」
「私、は……」

 ザーク様が好き。

 そんなこと、ずっと前からわかっていたことだ。

 そんな単純な想いに色んな理由をつけてエレノアは遠ざけていた。

「私の過去を知ったら、ザーク様だって軽蔑するかもしれない……」

 この期に及んで尻込みするエレノアに、三人が言い寄る。

「イザーク様が?! 有り得ない!!」
「過去に何があったかは聞きませんが、兄上の重たい愛を舐めないほうがよろしいかと」
「エレノア様は騎士団の女神です!! 万が一にも団長がエレノア様を軽蔑するって言うんなら、第一隊をあげてデモを起こしますよ!!」

 三人の言葉にエレノアは目をパチクリとさせる。

「エレノア様! 団長を見捨てないでください!」
「俺、団長が話しかけやすくなったのはエレノア様のおかげだと思ってます!」
「エレノア様に捨てられたら、団長、また氷に戻っちまうよー!」

 回復した第一隊の騎士たちがいつの間にかエレノアたちを囲み、口々に声を上げた。

「みんな……」

「ね? イザーク様の隣にはエレノア様がいてあげないと」

 皆がエレノアをイザークの妻にと望み、認めてくれている。その事実に、積み上げた色んな言い訳が解けていくのをエレノアは感じていた。
 
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