ドロ甘な愛を稀血に溶かして


私は持っていた封筒を、無理やり環くんの手に握らせると

涙を拭きながら、環くんに微笑んだ。



今が、環くんの婚約者でいられる最後の時間なんだ。

大好きな瞳に映るのが泣き顔なんて、悲しすぎるから。



私はさらに口角を上げ、ニコッ。



「環くん。婚約に関する誓約書、破って封筒に入れておいたからね」


「……えっ?」


「今まで私の婚約者でいてくれて、ありがとう」


「……美織……ちゃん?」



美織ちゃんかぁ。

夢以外で名前呼ばれたの、6年ぶりだよ。



なんで瞳を陰らせて、困ったような顔をするかなぁ?


『やっと俺は、自由に恋ができる!』


私から解放されて嬉しいって、飛び跳ねて喜ぶところでしょ。



もしかして、家族に怒られないか心配してる?

親に確認もとらず、婚約を破談にしたこと。



「大丈夫だよ、環くんのお父さんたちには私が謝るし」

< 11 / 141 >

この作品をシェア

pagetop