ドロ甘な愛を稀血に溶かして
私は持っていた封筒を、無理やり環くんの手に握らせると
涙を拭きながら、環くんに微笑んだ。
今が、環くんの婚約者でいられる最後の時間なんだ。
大好きな瞳に映るのが泣き顔なんて、悲しすぎるから。
私はさらに口角を上げ、ニコッ。
「環くん。婚約に関する誓約書、破って封筒に入れておいたからね」
「……えっ?」
「今まで私の婚約者でいてくれて、ありがとう」
「……美織……ちゃん?」
美織ちゃんかぁ。
夢以外で名前呼ばれたの、6年ぶりだよ。
なんで瞳を陰らせて、困ったような顔をするかなぁ?
『やっと俺は、自由に恋ができる!』
私から解放されて嬉しいって、飛び跳ねて喜ぶところでしょ。
もしかして、家族に怒られないか心配してる?
親に確認もとらず、婚約を破談にしたこと。
「大丈夫だよ、環くんのお父さんたちには私が謝るし」