ドロ甘な愛を稀血に溶かして
「いるんだ? 美織ちゃんに……そういう人……」
「えっ? 今なんて?」
「……なんでもない」
「環くんのお家にある婚約証明書も、処分しておいてね」
「……わかった」
怒りのこもった顔で唇をかみしめ、封筒を握りつぶした環くん。
「どいて」
邪魔者を追い払うように、私の肩を手で押すと
よろける私の横を、不機嫌顔で通り過ぎ
到着したバスに乗り込んでいった。
この時、私の耳には届かなかったんだ。
「稀血の『誘い人』を守れるのは、俺だけなのに……」
環くんが弱々しくこぼした、悲しみ交じりの声なんて。