ドロ甘な愛を稀血に溶かして
大好きなのに。
彼女を笑顔にしたいのに。
俺のきつい態度が、彼女の心を痛めつけているという現実。
耐えられなくて。
罪悪感で押しつぶされそうな日々に限界で。
部屋の壁じゅうに拳を食い込ませるほどの、自暴自棄になっていた頃。
俺は美織ちゃんの夢の中に、入り込めるようになったんだ。
夜限定。
美織ちゃんをとことん甘やかしても、俺は吸血鬼にならない最高の空間。
おじいちゃんに話したら、美織ちゃんは縁がある人を夢の中に招くことができる『誘い人』なんだろうと言われた。
『誘い人』
大昔、吸血鬼の村では『いけにえ』の対象だったらしい。
村にある底なし沼に『誘い人』を落とすことで、吸血鬼が人間の世界で身バレすることなく暮らせることを願っていたんだとか。