ドロ甘な愛を稀血に溶かして

「あっ…あのね……たまきくん……」



思ったより、声がかすれてしまった。

心の中の半分以上が、悲しみに支配されているせいなんだろうけど。



私の小声に気づいた環くんは、振り返ってはくれたものの……


明らかなる不機嫌顔。

私をにらむ瞳が冷たすぎ。



環くんは「はぁぁぁ~」と重い溜息をこぼすと



「前に言ったよね? 俺に話しかけないでって」



きつい捨て台詞を吐き、再び前を向いてしまった。



私の声すら、聴きたくないんだろう。

ポケットからワイヤレスイヤホンを取り出し、耳の穴に押し込んでいるのがその証拠。



わかってるよ、環くんが私を大嫌いなことくらい。

毎日のことだもん。



朝バス停で、とびきりの笑顔で挨拶してもスルー。

返事がないのは当たり前。

視線すら合わせてもらえない。

環くんが教室で友達とおしゃべりしている時も、私が近寄るとどっかに行っちゃうし。


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