ドロ甘な愛を稀血に溶かして
立ち上がろうとした直前
「あの、すいません」と声をかけられた。
心配げな顔で私を覗き込んできたのは、スーツ姿の男性。
細身で背が高い。
25歳くらいかな?
長めの黒髪は緩くパーマがかかっていて。
レッドカーペットを歩く大人気俳優並みに、紅色のスーツと黒シャツが似合っている。
遊園地に来る格好ではないような。
黒光りした、高そうな革靴を履いているし。
でも人のことは言えないか。
私がまとっているのは、高校の制服で。
どんな格好で遊園地を楽しむかは、個人の自由だしね。
「鍵、見ませんでしたか? 黒猫のキーホルダーが一緒についてるんだけど」
「落としちゃったんですか?」