ハプニングは恋のはじまり
王子様、などではなかった。
真っ赤な髪に口元にピアスをした、どうみてもヤンキーだった。
八重は引っ張られるがまま少年とともに走り出す。トクン、と心臓が大きく高鳴っていた。
「……っ、待て!!」
倒れたSPは起き上がりながら叫ぶ。
何が起きたかわからないが、赤髪の少年は閃光の如くの速さで走り抜け、あっという間に八重を連れ出してくれた。
「ここまで来りゃ大丈夫か?」
「っ、はあっ……、はあっ」
「お、おい大丈夫か?」
「す、すみません……」
勢いに任せて一緒に走ってきたけれど、彼の足の速さに合わせていたので息切れしてしまった。やはり自分は運動の才能がないと思いつつ、八重は呼吸を整える。
「失礼しました」
「いやこっちこそ、急に悪かった」
改めて顔を上げてみると、鮮やかな赤髪がとても印象的だ。口元のピアスは厳つい印象を与えるけれど、よく見るとなかなかにイケメンだった。
「あの、あなたはどうして……?」
「あいつらに捕まってたんじゃねぇのか?ヤバそうな奴らに囲まれて、すげー暗い顔してたからよ」
言われてそんなに暗い顔をしていたのかと気づく。表情に出さないようにしていたと思っていたが、隠し切れていなかったようだ。