ハプニングは恋のはじまり


 今度は八重がパチパチと瞬きをして見返す。


「えっ……でも、あなたも修学旅行で来られているのでしょう?」

「そうだけど、大丈夫。同じ班の奴らには上手く言っとくし」

「でも……」

「なんだよ。そっちから言い出しといてなんで渋るんだ?」


 明緋は大きな口を開けて笑った。チラリと見えた白い歯は歯並びが綺麗だった。


「そうなのですが、初対面の方に失礼だったなと思いましたので……」

「じゃあ、これならどうだ?俺は男子校で修学旅行中に女子とデートなんてのは普通無理なわけ。
でも八重と一緒ならダチに自慢できるんだが?」


 悪戯っぽく笑う明緋に目をパチクリさせてしまったが、段々と笑いが込み上げてきた。


「ふふっ、それは自慢できますわね。ありがとうございます、よろしくお願いします」

「よし、じゃあ遊ぶか!」

「はい」


 何故だろう、初めて出会った時から明緋と話すのはとても居心地が良いと思った。
 今まで同い年の男子に気軽に接してもらったことのない八重は、感じたことのない新鮮さに胸をときめかせていた。

 念のため、鏡花には「後で合流します」とメッセージを入れておいた。


「(ごめんなさい、少しの間だけ悪い子にならせてください)」


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