ハプニングは恋のはじまり


 琉球衣装のまま歩きながら、明緋に尋ねた。


「明緋さんはどうして髪を赤くしようと思ったんですの?」

「赤って強そうだし目立つだろ?」


 小学生男子みたいな回答で笑ってしまった。


「つーか八重こそ、俺みたいな奴いたら怖くねーの?」

「いえ、全く」

「マジか。肝の据わったお嬢様なんだな」

「わたくしの家は警察官なので、怖そうな顔には慣れていますの」

「ぶははっ!怖そうな顔に慣れてるってすげーな!」

「(幼馴染の家が極道だから……というのは黙っておきましょう)」


 二人はそんな風に会話をしながら、フルーツパーラーに入った。マンゴーやグアバ、シークァーサーなど南国のフルーツジュースが楽しめる。
 その中でも一際目立つのはココナッツ丸ごと使った生ジュースだ。ストローを二つ刺し、二人で一個を飲むこともできるらしい。


「せっかくならココナッツが飲みたいのですが、一人では飲み切れませんわ」
「じゃあ、一緒に飲むか?」
「よろしいのですか?」
「おう。俺も気になるし」
「カップルでしたら、こちらのハートのストローをおつけしております!」


 見せられたのは、二つの赤いストローがハート型に交差している如何にもカップルがやるようなストローだった。


「あ、いえ、わたくしたちは……」
「それでお願いします!」


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