ハプニングは恋のはじまり


 明緋の言葉に驚いて、彼の衣装の裾を引っ張る。


「どうして……!」

「いいじゃねーか。せっかくの旅行なんだし、ちょっとくらいハメ外そうぜ」


 屈託のない笑顔でそう答える明緋。


「それとも俺みたいなのが彼氏じゃ不満か?」

「いえ……明緋さんが良ければ」


 なんだろう、見た目の厳つくて怖そうな印象とは程遠い、少年らしい無邪気さにドキドキしてしまう。
 ハートのストローはちょっと照れ臭くもあるけど、カップルだと思われるのは別に嫌じゃない。

 八重は初めての感情に戸惑ってばかりだった。
 これが修学旅行マジックというやつなのだろうか。


「んっ!うめえ!八重も飲んでみろよ」


 言われてストローに口をつけてみたら、ココナッツの甘さが口いっぱいに広がった。


「美味しいですわ」

「だろ!?」


 何故か明緋が得意げなのがおかしい。


「明緋さんは甘いものはお好きですか?」

「おう、好きだぜ」

「意外ですわね」

「似合わなくて悪かったな」

「いえ、わたくしも好きなので」

「八重って和菓子好きそうだよな」

「よく言われますが、スイーツは圧倒的に洋菓子派ですの」

「マジか」


 そんな風にジュースを飲みながら会話を楽しんでいたが、ある人影にハッとする。


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