ハプニングは恋のはじまり
八重おつきのSPだった。恐らく八重を探しに来たのだろう。
八重は慌てて花笠で顔を隠し、身を縮める。
八重の姿で明緋も気づき、八重を隠すように前に立ってくれた。
「俺結構肩幅あっからさ、隠れてな」
「ありがとう、ございます……」
本当に明緋はがっしりとした体型で肩幅がある。何かスポーツをやっていそうな鍛え方だと、背中だけでも感じた。
何があっても守ってくれそうな頼もしさを感じる。
やがてSPは出ていき、八重はホッとして顔を出した。
「行っちまったみたいだな」
「はい、ありがとうございました」
「八重、もう少しだけ一緒にいないか?」
そう言った明緋の頬は微かに朱色に染まっている。だが、八重の目を真っ直ぐ見て真剣な眼を向けていた。
本当はそろそろ帰らなければならない。
多分鍾乳洞探検は終わった頃だし、きっと鏡花たちが心配している。
でも、もう少しだけこの時間を続けたいと思ってしまった。
「はい、お願いします」
自分自身に驚きと戸惑いが隠せない程、明緋との時間は心地良い。胸のときめきも何だか心地良く感じてしまう。
恋人とのデートとは、こういうものなのだろうか。