ハプニングは恋のはじまり


 おそろい、という言葉にキュンとしてしまう。
 戸惑いながらも「嫌でなければ」とオレンジのガラスを選ぶことにした。

 スタッフに手伝ってもらいながら、鉄棒の先端に付けられたガラスを吹いて膨らませていく。
 小さかったガラス玉が息を吹きかける毎に段々と大きく膨らんでいく。


「(難しいですわね……)」


 カシャ。
 八重が苦戦しながら吹いていると、シャッター音が鳴った。


「……今撮りました?」

「いやだってリスみたいだったからさ」

「からかわないでくださいませ」

「かわいいって意味だよ」

「……。」

「何、どうした?マジでリスみたいな顔してっけど」

「……なんでもありませんわ」


 きっと明緋にとっては何でもないことなのだろう。
 かわいいなんて、言い慣れているのかもしれない。

 彼は見るからな目立つしモテそうだし、チャラそうだ。


「(……わたくしは何をイライラしているのでしょう?)」


 自分ばかりドキドキしてしまっているのが悔しいのだろうか。

 八重には恋愛経験などない。
 男子たちは皆八重のことを綺麗だの美しいだの、まるで高嶺の花を拝むように見つめる。

 修学旅行にボディガードが同伴するような身の上だ、自分と真剣に付き合いたいと思う男子はいないだろうことはわかっていた。


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