ハプニングは恋のはじまり
自分にこんな一面があったなんて知らなかった。
これを恋と呼んでいいのかはわからない。
たった数時間しか一緒に過ごしていないのに、こんな気持ちになってしまうのは――いつもと違う旅行中だからだろうか。
それとも、相手が明緋だからなのだろうか。
恋愛未経験の八重にはわからなかったが、これが恋だったらいいな、と思う気持ちもあった。
「できた!」
「できましたわね!」
なんだかんだで透明なガラスにオレンジ色が映えるタルグラスが完成した。といっても本当の完成まではまだ時間がかかるため、出来上がり次第自宅に郵送してもらえることになる。
夕日を映し出したようなオレンジのグラスが二つ。仲良く並んでいるだけでときめいた。
「なあ八重、俺も聞いていいか?」
「はい?」
「その髪のメッシュだけど」
それは八重の黒髪に一部だけ入ったグレーのメッシュのことだろう。品行方正な八重らしくない、とよく質問されることでもある。
「ああ、これは……」
「見つけましたよ、八重」
その声にハッとした。
振り返ると、そこにいたのは那桜だった。
「那桜さん……」
楽しい時間は突然終わりを迎えようとしていた。