ハプニングは恋のはじまり
* * *
結局明緋とはちゃんと挨拶できないまま別れてしまった。連絡先も交換していないし、横浜の高校だと言っていたからバッタリ会うこともないだろう。
帰る直前、八重のメッシュのことを聞いてくれたのにそれに答えることもできなかった。
「(不義理な別れ方をして、最低ですわね……)」
八重はホテルのベランダで一人溜息をついていた。同室の鏡花は今お風呂に入っている。
先にお風呂をいただいた八重は、自前の浴衣に着替えて夜風に当たっていた。寝る時は家でも浴衣なので、修学旅行にも持ってきていた。
「え……?」
不意に視界に入った人影に驚いて二度見する。
まだコンタクトを外す前だからはっきりと見える。
「どうして……!?」
八重は動揺して、お風呂に入っている鏡花に向かって叫んだ。
「鏡花!わたくしちょっと中庭の方で散歩して参りますわっ!!」
「えっ大丈夫!?」
「ボディガードを呼びますから大丈夫です!」
もちろん大嘘だ。八重は見つからないように慎重に隠れながら、中庭に出た。
反省したばかりなのに申し訳ないという思いもありつつ、自分の見たものが本当なのかどうしても確かめたかった。
「――明緋さんっ!!」
「八重!!」