ハプニングは恋のはじまり
やっぱり間違いなかった。
目の前にいたのは私服姿の明緋だった。暗くても燃えるような赤髪は存在感を放っている。
「どうしてこちらに……!?」
「わりぃ。東桜の泊まってるホテル、ダチ伝いに聞いたんだ。八重に会えるかどうかは賭けだったけど、気づいてくれてよかった」
「……ベランダから赤い髪が見えたので」
「ハハッ、やっぱりこの髪色にして正解だったな!」
白い歯を見せて無邪気に笑う明緋に胸がきゅうっとなる。
「どうして会いに来てくださったのですか?」
「ごめん、どうしても気になっちまって」
「そんなに心配してくださっていたのですか」
「それもあるけど……」
明緋は歯切れが悪く、口をモゴモゴさせながら頭を掻く。
「その、一緒に帰った奴、幼馴染って言ってた」
「ああ、那桜さんですわね」
「本当に彼氏じゃないんだよな?」
じっと八重の目を見て尋ねた。顔色を窺うような、少し不安そうに八重を見つめる。
「ええ、彼氏じゃありません。大切な友人です」
「そうか……よかった」
明緋は心底安心したように胸を撫で下ろす。
「……もし彼氏でしたら、どうなさいましたの?」
今度は八重がじっと明緋の目を見つめて尋ねる。