ハプニングは恋のはじまり
過保護に八重を溺愛する父は、八重を外に出すことを嫌がった。一人で出かけるなど言語道断、修学旅行でさえボディガードを付ける程だ。
八重は大きな溜息をつく。
自分には自由がない。一時期は自宅に軟禁状態にされたこともある。
鏡花や那桜の働きかけで、今はこうして出られてはいるものの、ボディガードが目を光らせている。
せっかくの修学旅行なのに、落ち着かない。
それさえなければ、心から楽しむことができただろうに。
「八重パパ、今回は私たちがいてもダメって言ったんだ?」
鏡花がこそっと囁く。
「ええ、慣れない土地で子どもだけでは不安だからと。引率の先生もいるのに、教師なんかに任せられないの一点張りでしたわ」
「そっか〜」
「わたくしのせいで修学旅行の空気を台無しにしてしまいますわね」
肩を竦める八重に対し、鏡花はニコッと笑う。
「大丈夫だよ!思いっきり楽しんでたら忘れちゃうって!」
鏡花の前向きで明るいところに、八重は少なからず救われている。
気を取り直し、せっかくの修学旅行を全力で楽しもうと切り替えた。