ハプニングは恋のはじまり


「八重次行こう!」


 沈みかけた心を引っ張り上げてくれるのは、やはり鏡花だった。


「復興工事の様子がわかるみたいだよ」

「すごいですね」


 鏡花はこう見えてアメリカ人の血が入ったクォーターであり、瞳の色はグレーで地毛も明るめという日本人離れした容姿を持っている。
 いつも騒がしくしていることばかりが目立つが、黙っていればお人形さんのような美少女である鏡花。


「はしゃいでる吉野さんかわいい……」
「めっちゃかわいい」


 なのでこの通り、意外と男子にも人気がある。本人はまるで気づいていないが。


「…………。」

「那桜さん、顔が怖いですわよ」


 八重は無言でガン飛ばす那桜を小突いた。


「そんなに怖い顔してましたか?」
「ええ、カタギに見えないくらい」
「それは失礼しました」
「鏡花のことがそんなに気になるのなら、からかって遊ばず素直になりませんこと?」


 すると那桜はにこやかに微笑む。


「ご心配なく、鏡花は誰にも渡しませんから」


 時々垣間見せる那桜の黒くて重い愛情を鏡花は知らない。
 あくまで中立の立場で見守っている八重だが、時々思うのだ。那桜が本気を出したら、どうなってしまうのだろうと。


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