ハプニングは恋のはじまり


* * *


 海沿いのホテルはまだ新築で綺麗な建物で、中も広々としている。高校生が泊まるにはだいぶリッチなホテルだろう。
 夕食のビュッフェは沖縄料理が数多く揃い、デザートには南国のフルーツが楽しめる。


「やば〜!どれもめっちゃ美味しいんだけど!」

「どれも珍しくて興味深いですわ。家でも作れるでしょうか」

「えっ八重作るつもりだったの!?」

「美味しいものはいつでも食べたくなりますから、再現できるのならしてみたいです」

「すごっ!」

「食い意地が張ってるだけのお嬢とは大違いですね」


 さりげなく毒を振りまく那桜。もちろん鏡花にだけである。


「食い意地張ってない!」

「そんなに沢山皿に盛って説得力ありませんね」

「せっかくの旅行なんだから食べなきゃ損でしょ!」

「それを食い意地というんですよ」


 またいがみ合う二人は無視し、八重は静かに沖縄料理を味わった。調味料は何を使用しているのだろうか。
 沖縄独特の調味料をお土産に買って行くのもありだな、なんて思った。


「ねぇ、あの人たちホテルにもずっといるのかなー?」


 別のテーブルからそんな声が聞こえた。


「なんか監視されてるみたいで嫌だよねー」
「わかる。ちょっと落ち着かないよね」


 レストランの入口付近、トイレ付近、八重たちのテーブル付近にそれぞれボディガードが見張っている。
 やはり自分のせいで修学旅行の空気を壊しているな、と八重は落胆する。


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