初恋のつづき
プロローグ
卒業から十年経った今でも、この曲を聴くと思い出す。
高校生活最後の夏の終わり。
放課後の空き教室。
ひょんなことから始まった、二人だけの時間。
窓から柔らかに差し込む茜色に透ける、彼の少しだけ長めの明るい琥珀色の髪。
窓際に寄せた机に片足を乗せて座り、気怠げな雰囲気を纏わせて外を見遣る、端正な横顔。
耳たぶに三つ、上方外側の軟骨に二つ並んだピアスに彩られた、形の良い耳から覗くブラックのシンプルなワイヤレスイヤフォン。
そのイヤフォンで彼が、いつも聴いていた曲。
ーー当時は意外な選曲に驚いた、その曲のタイトルの意味。
それを知った時。
窓の外に向ける彼の視線の先に映るもの。
彼が放課後ここに来る理由。
それらに唐突に気づいてしまった私は、同時に痛みを主張し出した胸のせいで、いつの間にか淡く色づいていた自分の恋心にも不覚にも気づいてしまった。
だけど気づいた時にはもう、ままならない恋だった。
そんなほろ苦い、初恋の記憶。
ーーでも、まさかその初恋が十年越しに動き出す日が来ようとは、一体誰が想像しただろうーー。
高校生活最後の夏の終わり。
放課後の空き教室。
ひょんなことから始まった、二人だけの時間。
窓から柔らかに差し込む茜色に透ける、彼の少しだけ長めの明るい琥珀色の髪。
窓際に寄せた机に片足を乗せて座り、気怠げな雰囲気を纏わせて外を見遣る、端正な横顔。
耳たぶに三つ、上方外側の軟骨に二つ並んだピアスに彩られた、形の良い耳から覗くブラックのシンプルなワイヤレスイヤフォン。
そのイヤフォンで彼が、いつも聴いていた曲。
ーー当時は意外な選曲に驚いた、その曲のタイトルの意味。
それを知った時。
窓の外に向ける彼の視線の先に映るもの。
彼が放課後ここに来る理由。
それらに唐突に気づいてしまった私は、同時に痛みを主張し出した胸のせいで、いつの間にか淡く色づいていた自分の恋心にも不覚にも気づいてしまった。
だけど気づいた時にはもう、ままならない恋だった。
そんなほろ苦い、初恋の記憶。
ーーでも、まさかその初恋が十年越しに動き出す日が来ようとは、一体誰が想像しただろうーー。
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