初恋のつづき
「ひょっとして、名桐ってあの⁉︎私史上《《不良受け》》に推したい男ナンバーワンだった、あの名桐⁉︎」

「えっ⁉︎う、うーん、ごめん、それはちょっと分からないけど、多分、その名桐くんで合ってるんだと思う……」


私はBLに詳しくはないけれど、高校時代から今もそれをこよなく愛する彼女はその当時、名桐くんのことを不良受けに推していたらしい。

その昔、〝受け〟と〝攻め〟について、りかちゃんに随分と熱く語られたことがあるから、何となくは分かる。うん。

にしても、一体何て覚え方をしているんだりかちゃんは……。

ちなみに会社ではその趣味は隠して生息しているらしいのに、こんなところで不良受けとか言っちゃって大丈夫なのだろうか。

なぜか私の方がそわそわしながらこっそり周りを見渡せば、少し離れたところで休憩する人たちの視線は、幸い今はこちらには向いていなかった。


「へぇー、でもそっかー、あの名桐かぁ!で、どんなだった?」

「んー、清潔感のある黒髪でスーツも着崩すことなくピシッと着こなしてて、そつのない笑顔で企画の説明をこなす、爽やかな営業マンだった」

「え?待って。今誰の説明してる?」

「名桐くん」


お互い、一瞬顔を見合わせた。

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