初恋のつづき
父を小一の時に亡くしてから母一人子一人だった遠野家と、離婚により父一人子一人となった有賀家はその昔、同じマンションのお隣同士だった。
私が小六の時に有賀家が引っ越して来て、それから似たような境遇の両家はいつの間にか互いに助け合いながら生活をするようになって。
一人っ子だった私は亮太を〝亮ちゃん〟と呼び本当の弟のように可愛がっていたし、彼も彼で私のことを〝千笑ちゃん〟と呼んで何だかんだで懐いてくれて。
私たち二つの家族は、そうやって少しずつ、ごく自然に一つの家族になっていった。
こうして生まれた〝有賀家〟は、私にとって血の繋がりなど関係ない、何よりも大切な家族になった。
そんな家族の一人である亮ちゃんはwebデザイナーで、フレックスタイム制を取り入れているデザイン事務所に勤めている。
すでに結婚していて、五歳年上の綺麗な奥様京子さんと、可愛い二歳の息子、きょんちゃんこと京亮くんと三人暮らし。
亮ちゃん一家は京子さんのお父様が所有しているマンションのファミリー向けフロアに住んでいるのだけど、実は私も例の元カレとの同棲を解消してから、お父様のご厚意でそのマンションの単身者向けフロアの一室を身内価格で借りている。
そう、私たちは同じマンションに住んでいるのだ。
そしてノー残業デーだった水曜日の昨日。
京子さんから晩御飯のお誘いを頂いて亮ちゃんの家にお邪魔した時に、それを忘れて来てしまったらしい。
原因は、可愛いきょんちゃんと遊ぶのにすっかり夢中になってしまったせいか、……それとも、今日の夜の予定に無意識に浮き足立ってでもいたのか……。
……いずれにしても、よろしくない。
パチン!
私は電話を終えたあと、自分の頬を叩いて気合いを入れ直したのだった。