初恋のつづき
ーーその後、朝イチのミーティングに始まり、ひたすら今日のタスクをこなし続けて気づけば間もなく十三時になろうかというところ。
しばらくデスクワークに集中し過ぎてお昼をすっかり食べ損ねてしまい、ついさっき自分のデスクでストックしていたカロリー◯イト一つを辛うじてお茶で流し込んだ。
そこでプルル、プルル、と内線が鳴る。
「はい、広報宣伝部、有賀です」
『受付、田辺です。有賀さん宛に、有賀 亮太様という方がお見えになっています」
「ありがとうございます。すぐ行きます」
お待ちかねの亮ちゃんだ。
私は一言真瀬さんに声を掛けて、五階からロビーまでの道のりを急いだ。
「ーー亮ちゃんごめんね!わざわざありがとう……!」
エレベーターで一階まで降りた私は受付ロビーの椅子に腰掛けていた亮ちゃんを見つけるなり、何となくいつもよりもザワザワしている気がするエントランスを抜けて駆け寄る。
すると私に気付いて立ち上がった彼は、持って来てくれた書類でコツン、と私の頭を軽く叩いた。
「うちに忘れてくとか、ほんとしっかりしてるように見えて抜けてるよね、千笑ちゃんは」
「う……、ごめん」
差し出されたそれを受け取りながら面目ない、と謝れば、「まぁ、そこが千笑ちゃんの千笑ちゃんたる所以だよね」と、ふわっと優しい笑みを向けられる。
白いTシャツにブラウンの五分袖オーバーサイズジャケットを羽織り、それとセットアップのストレートパンツをラフに着こなしている高身長の亮ちゃんは、身内の贔屓目に見てもなかなかカッコいいと思う。
タレ目の柔和な面差しにぴったりのマッシュルームカットで、いかにも韓国のアイドルグループにいそうな感じ。
受付の二人がこちらの方にさり気なく視線を送っているのが、亮ちゃんの肩越しにチラッと見えた。
聞くところによると、受付の方たちは来社される殿方たちをしっかりそういう目でチェックしているらしいから、彼の左手薬指に光る指輪はすでに確認済みなのだろうけれど。