初恋のつづき
「あ、ああ、はい。何となく、そうかなぁと思ってました。あの、名桐くんだからなぎちゃんですか?」
さっきの軽妙なやり取りは、気心の知れた仲だからこそだろう。
例えるなら警戒心の強そうな黒猫と、全く警戒心のなさそうな人懐っこい柴犬のように見た目も中身も真逆のタイプの二人だけど、だからこそ気が合うのかも知れない。
私のその質問に、渋谷さんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そう!そうなんです!普段はそう呼んでるんです。ほんとは最初、ゆりちゃんって呼んでたんですけどね、呼ぶたびに睨まれるわ、しまいには返事もしなくなるわで結局なぎちゃんに落ち着いたんですよねぇ」
「……下の名前、あんま好きじゃねーんだよ。昔は今よりさらに女顔だった上にこの名前だろ?ガキの頃から〝男女〟って散々揶揄われて、軽いトラウマだよな、もう。大体なぎ〝ちゃん〟って呼び方もオレは……」
そこで名桐くんが久しぶりに口を開いたけれど、渋い顔をした彼の口から出て来たのはそんな風に自分の名前を卑下するものだったから、私は咄嗟に彼が言い終わる前に被せてしまった。
「〝由凛〟の〝凛〟の字は、凛とした、とか凛々しい、とかに使われる〝凛〟でしょう?〝名は体を表す〟って言うから。私は名桐くんにぴったりだなって思うよ?」
ーー十年前、あの空き教室から外を眺めていた横顔も。
プロジェクトメンバーの前で堂々と企画内容を説明したり、意見を交わす今の姿も。
どちらも凛とした佇まいを感じさせた。
見た目も中身も確かに変わったけれど、彼の纏うそんな雰囲気だけは変わってないなぁと、改めて今日見た時にも思ったから。
だから名桐くんはそう言うけれど、由凛という名前は、やっぱりぴったりなんじゃないかな。
なんて、思ったままのことがそのままペラペラと口を突いて出て、言い切ってしまってからハッ……!と我に返る。
これはちょっと、さすがに差し出がまし過ぎたかもしれない……。
「……あー、ほんともう、遠野は……」
そんな私の言葉に、名桐くんが片手で顔を覆いながらプイ、とそっぽを向いてしまったから、私は焦った。
さっきの軽妙なやり取りは、気心の知れた仲だからこそだろう。
例えるなら警戒心の強そうな黒猫と、全く警戒心のなさそうな人懐っこい柴犬のように見た目も中身も真逆のタイプの二人だけど、だからこそ気が合うのかも知れない。
私のその質問に、渋谷さんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そう!そうなんです!普段はそう呼んでるんです。ほんとは最初、ゆりちゃんって呼んでたんですけどね、呼ぶたびに睨まれるわ、しまいには返事もしなくなるわで結局なぎちゃんに落ち着いたんですよねぇ」
「……下の名前、あんま好きじゃねーんだよ。昔は今よりさらに女顔だった上にこの名前だろ?ガキの頃から〝男女〟って散々揶揄われて、軽いトラウマだよな、もう。大体なぎ〝ちゃん〟って呼び方もオレは……」
そこで名桐くんが久しぶりに口を開いたけれど、渋い顔をした彼の口から出て来たのはそんな風に自分の名前を卑下するものだったから、私は咄嗟に彼が言い終わる前に被せてしまった。
「〝由凛〟の〝凛〟の字は、凛とした、とか凛々しい、とかに使われる〝凛〟でしょう?〝名は体を表す〟って言うから。私は名桐くんにぴったりだなって思うよ?」
ーー十年前、あの空き教室から外を眺めていた横顔も。
プロジェクトメンバーの前で堂々と企画内容を説明したり、意見を交わす今の姿も。
どちらも凛とした佇まいを感じさせた。
見た目も中身も確かに変わったけれど、彼の纏うそんな雰囲気だけは変わってないなぁと、改めて今日見た時にも思ったから。
だから名桐くんはそう言うけれど、由凛という名前は、やっぱりぴったりなんじゃないかな。
なんて、思ったままのことがそのままペラペラと口を突いて出て、言い切ってしまってからハッ……!と我に返る。
これはちょっと、さすがに差し出がまし過ぎたかもしれない……。
「……あー、ほんともう、遠野は……」
そんな私の言葉に、名桐くんが片手で顔を覆いながらプイ、とそっぽを向いてしまったから、私は焦った。