初恋のつづき
大通りから逸れて、線路沿いを二人で並んで歩く。

ふと空を仰げば、見上げた先にちょうど綺麗な満月が浮かんでいた。

その横を、車内だけが煌々と照らされた電車が風を巻き起こして通り過ぎていく。


「渋谷さんって、すごく明るくて面白い人だね」


ふわっと(なび)いた髪を押さえながら私がそう言えば、名桐くんは少しだけ苦虫を噛み潰したような顔になった。


「……あれは、ただうるさいだけだ」

「ふふっ」


でも、その表情とセリフほどそうは思っていないんだろうなぁと感じさせる、親しみの籠った温かさを含んだ声音だったから、そこに二人の関係性が垣間見えた気がして何だか嬉しくなる。


「今日はもうあいつで胃もたれしそうだから、渋谷の話は終わりな」

「ふふふっ」


その言い方が可笑しくて、私はまた笑う。

確かに、今日の渋谷さんの存在感は凄まじかった。

彼が帰ったあとも、話のタネになるほどに。


「ーーあ、そういえば、名桐くんのLIN〇のアイコンって、あの、高校の時に使ってたイヤフォンだよね?」


そこで急にふと思い出して隣の名桐くんを見遣れば、彼は少し驚いたように瞠目した。
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